雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
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書き損じです。
仕事のため1日間を開けたら、テンション的につらくなりました。
今は、聖闘士だったら裸族のサガが書きたいです()
週末、バサラの三政♀で御鈴廊下ネタをアップ出来たら良いなあと思います。
*
*
*
ミロの幼少期の話が出たのは、毎週水曜日恒例の双児宮での夕餉のときだった。
いつからか、双児宮では、毎週水曜日に、サガをまじえての夕餉の時間が持たれるようになっていた。きっかけは、長い間離れ離れになっていた双子の軋轢をなくそうとしたミロの提案だったように思う。それとも、寝食を惜しんで教皇職に身を投じるサガを心配したアテナの要請だっただろうか。両方かもしれない。忘れてしまったくらいだから、大したことではなかったのだろう。いずれにしても、毎週水曜日にサガが手土産を持って、今ではカノンの守護する双児宮へやって来るのが習慣となっていた。
カノンの兄であるサガは、あまり酒を嗜まないサガのためにミネラルウォーターを取りに下がったミロの背を見ながら、少し目を細めて嬉しそうに微笑んだ。あまり見ることのない、心からいつくしむ笑みだった。
「ミロも成長したものだな。以前はあんなに小さかったのに。」
カノンは突然の兄の言葉におどろいて、パンをちぎる手を休めた。
当然だが、存在を隠されていたカノンはミロの幼少期をほとんど知らなかった。自分が出会う前のことも知りたいという余裕が生まれたのは、聖戦の影響で混乱していた聖域が落ち着きを取り戻し、ミロの恋人の座を得て、ミロ自身を知り、しばらく経ってからだった。つまり、ごく最近だ。それにしても、ほとんど、自分の前に恋人がいたのかどうかという一点に終始していたので、カノンはやっぱりミロの過去を何も知らないも同然だった。
ごくまれにミロから語られる昔話は、十二宮の階段を駆け降りるのはどちらが早いかアイオリアと競争して、二人して転がり落ちた失敗談や、小さい頃はオリーブが苦手で食べられなかったというほんのささいなことで、他人が絡むようなことは口にしなかった。前者にしても、ふっと口を滑らせただけである。ミロがあまり昔の話をしようとしないのは、同じく聖域に居を構えながら、存在しないものとして扱われていたカノンに気を使ってのことかもしれなかったが、カノンはそのことをあまり気に留めていなかった。ミロのはじめての恋人はカノンで、おそらく、最後の恋人もカノンだろう。その事実だけあれば、カノンは心から満足できたのだ。
けれど、サガの口から小さかった頃のミロの話を聞いたとき、おかしな話だが、はじめてカノンの余裕は崩された。これまで、同じ聖域にいたのだから、サガがミロの幼いころを知らないはずがないのに、どういうわけか、自分と同じでサガもミロの幼少期を知るはずがないと思い込んでいた事実に気づかされたのだ。
こうなると、恋人であるカノンは面白くない。カノンは少し眉間にしわを寄せ、パンを皿の上に置くと、まだ目をやさしく弓なりにして笑んでいるサガに食ってかかろうとした。しかし、急に気が変わって、サガの方へ身を乗り出すと、小声で言った。声が小さくなったのは、恋人のいないすきに恋人の過去を問い質すのが、後ろめたい気がしたからかもしれない。
「ミロの知っていることを教えろ。」
サガは少し面白そうに唇を綻ばせて、カノンを見つめた。誰もいないときに、カノンだけに見せる、得意ぶった眼差しだった。
「なぜ、お前に教えなければならない?」
みなが聖人の生まれ変わりともてはやすサガは、カノンにだけ意地の悪い真似をする。幼少期の名残だろうか。だとしたらたちの悪いくせだと思いながら、カノンはサガを睨みつけた。
「食事の礼だと思え。」
「礼ならば、手土産を持ってきただろう。あれでは不服か?」
余裕の笑みを崩さずに、サガが問うてくる。サガにはカノンの考えていることなど、手に取るようにわかっているのだろう。サガとのやりとりに焦れてきたカノンは、不満の唸り声をあげてから、素直に言うことにした。もう、いつミロが帰って来るかわからない。別にミロがいても問題はないのかもしれないが、なんとなく、当人がいるところで昔の話を掘り下げるのは気が引けた。
双子座の黄金聖闘士として聖域に生を受けたサガを兄に持つカノンは、黄金聖闘士であることがどれだけ誉れであり、重責であるか理解していた。けっして自分が浴びることのない脚光を日陰から妬んでいた分、もしかすると、カノンはサガより黄金聖闘士であることをわかっているかもしれなかった。
黄金聖闘士を目指す上で、力技の牡牛座や獅子座に比べて小宇宙の性質に偏りのある蠍座や水瓶座は、ひじょうに狭き門だと聞くから、幼いころから黄金聖闘士になるべく、ミロは羨望の眼差しを浴びていたに違いなかった。それは、サガに対する以上の期待であったかもしれない。これまで、ミロには、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも沢山あっただろう。けれど、閉塞した場所でずっと息を殺して生きていた自分には何もないのだという劣等感が、ミロに問いかけることをためらわせた。
おそらく、ミロはカノンが訊けば、何の気なしに応えてくれることだろう。ミロとはそういう男だ。それに対して、カノンは語るべき過去が何もない。光に彩られたミロの生は、誰にも顧みられなかったカノンの生とは真逆に位置していた。
「俺がミロのことを知りたい。」
せがむカノンに、たいして生まれた時間に差があったはずでもないはずの兄は、いかにも年長者らしい、にくたらしい笑顔を見せた。
「最初からそう言え、愚弟が。」
サガはそう言うと、ミロが消えた扉を一瞥し、再び、カノンを見つめた。また、あの、余裕の表情だった。内心、カノンはサガの余裕が面白くなかった。それは顔にも出ていたと思う。けれど、カノンは反論を呑みこんだ。
それまで孤独にうずもれていたカノンの生に光を与えてくれたのはミロだ。カノンが、アテナに対するような義務感でもなく、兄に対する同族愛でもない、純粋な愛情を覚えたのはミロが初めてだった。だから、黄金聖闘士という立場上難しいことは承知の上だったが、カノンの一番がミロであるように、カノンはミロの一番になりたかった。
1時間前まで、カノンは、二人を繋ぎ止める「今」だけがあれば良い気がしていた。しかし、サガの口からミロのことが漏れた今になって急に、置いてきぼりにされたような不安感が押し寄せてきていた。
「…お前は知らないだろうが、」
もったいぶってサガが口火を切ったとき、カノンの愛して止まない小宇宙が近付きつつあった。カノンはよっぽどサガを急かしてやろうかと思いながら、ここで機嫌を損ねてはこれまでの我慢が無駄になると判断し、次の言葉を待った。サガは最後にあのにくたらしい笑みをもう一度見せると、得意げに語った。扉が開く直前のことだったから、きっとタイミングを計っていたに違いない。
「ミロは私の弟子になりたいと言って泣いたのだ。」
仕事のため1日間を開けたら、テンション的につらくなりました。
今は、聖闘士だったら裸族のサガが書きたいです()
週末、バサラの三政♀で御鈴廊下ネタをアップ出来たら良いなあと思います。
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ミロの幼少期の話が出たのは、毎週水曜日恒例の双児宮での夕餉のときだった。
いつからか、双児宮では、毎週水曜日に、サガをまじえての夕餉の時間が持たれるようになっていた。きっかけは、長い間離れ離れになっていた双子の軋轢をなくそうとしたミロの提案だったように思う。それとも、寝食を惜しんで教皇職に身を投じるサガを心配したアテナの要請だっただろうか。両方かもしれない。忘れてしまったくらいだから、大したことではなかったのだろう。いずれにしても、毎週水曜日にサガが手土産を持って、今ではカノンの守護する双児宮へやって来るのが習慣となっていた。
カノンの兄であるサガは、あまり酒を嗜まないサガのためにミネラルウォーターを取りに下がったミロの背を見ながら、少し目を細めて嬉しそうに微笑んだ。あまり見ることのない、心からいつくしむ笑みだった。
「ミロも成長したものだな。以前はあんなに小さかったのに。」
カノンは突然の兄の言葉におどろいて、パンをちぎる手を休めた。
当然だが、存在を隠されていたカノンはミロの幼少期をほとんど知らなかった。自分が出会う前のことも知りたいという余裕が生まれたのは、聖戦の影響で混乱していた聖域が落ち着きを取り戻し、ミロの恋人の座を得て、ミロ自身を知り、しばらく経ってからだった。つまり、ごく最近だ。それにしても、ほとんど、自分の前に恋人がいたのかどうかという一点に終始していたので、カノンはやっぱりミロの過去を何も知らないも同然だった。
ごくまれにミロから語られる昔話は、十二宮の階段を駆け降りるのはどちらが早いかアイオリアと競争して、二人して転がり落ちた失敗談や、小さい頃はオリーブが苦手で食べられなかったというほんのささいなことで、他人が絡むようなことは口にしなかった。前者にしても、ふっと口を滑らせただけである。ミロがあまり昔の話をしようとしないのは、同じく聖域に居を構えながら、存在しないものとして扱われていたカノンに気を使ってのことかもしれなかったが、カノンはそのことをあまり気に留めていなかった。ミロのはじめての恋人はカノンで、おそらく、最後の恋人もカノンだろう。その事実だけあれば、カノンは心から満足できたのだ。
けれど、サガの口から小さかった頃のミロの話を聞いたとき、おかしな話だが、はじめてカノンの余裕は崩された。これまで、同じ聖域にいたのだから、サガがミロの幼いころを知らないはずがないのに、どういうわけか、自分と同じでサガもミロの幼少期を知るはずがないと思い込んでいた事実に気づかされたのだ。
こうなると、恋人であるカノンは面白くない。カノンは少し眉間にしわを寄せ、パンを皿の上に置くと、まだ目をやさしく弓なりにして笑んでいるサガに食ってかかろうとした。しかし、急に気が変わって、サガの方へ身を乗り出すと、小声で言った。声が小さくなったのは、恋人のいないすきに恋人の過去を問い質すのが、後ろめたい気がしたからかもしれない。
「ミロの知っていることを教えろ。」
サガは少し面白そうに唇を綻ばせて、カノンを見つめた。誰もいないときに、カノンだけに見せる、得意ぶった眼差しだった。
「なぜ、お前に教えなければならない?」
みなが聖人の生まれ変わりともてはやすサガは、カノンにだけ意地の悪い真似をする。幼少期の名残だろうか。だとしたらたちの悪いくせだと思いながら、カノンはサガを睨みつけた。
「食事の礼だと思え。」
「礼ならば、手土産を持ってきただろう。あれでは不服か?」
余裕の笑みを崩さずに、サガが問うてくる。サガにはカノンの考えていることなど、手に取るようにわかっているのだろう。サガとのやりとりに焦れてきたカノンは、不満の唸り声をあげてから、素直に言うことにした。もう、いつミロが帰って来るかわからない。別にミロがいても問題はないのかもしれないが、なんとなく、当人がいるところで昔の話を掘り下げるのは気が引けた。
双子座の黄金聖闘士として聖域に生を受けたサガを兄に持つカノンは、黄金聖闘士であることがどれだけ誉れであり、重責であるか理解していた。けっして自分が浴びることのない脚光を日陰から妬んでいた分、もしかすると、カノンはサガより黄金聖闘士であることをわかっているかもしれなかった。
黄金聖闘士を目指す上で、力技の牡牛座や獅子座に比べて小宇宙の性質に偏りのある蠍座や水瓶座は、ひじょうに狭き門だと聞くから、幼いころから黄金聖闘士になるべく、ミロは羨望の眼差しを浴びていたに違いなかった。それは、サガに対する以上の期待であったかもしれない。これまで、ミロには、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも沢山あっただろう。けれど、閉塞した場所でずっと息を殺して生きていた自分には何もないのだという劣等感が、ミロに問いかけることをためらわせた。
おそらく、ミロはカノンが訊けば、何の気なしに応えてくれることだろう。ミロとはそういう男だ。それに対して、カノンは語るべき過去が何もない。光に彩られたミロの生は、誰にも顧みられなかったカノンの生とは真逆に位置していた。
「俺がミロのことを知りたい。」
せがむカノンに、たいして生まれた時間に差があったはずでもないはずの兄は、いかにも年長者らしい、にくたらしい笑顔を見せた。
「最初からそう言え、愚弟が。」
サガはそう言うと、ミロが消えた扉を一瞥し、再び、カノンを見つめた。また、あの、余裕の表情だった。内心、カノンはサガの余裕が面白くなかった。それは顔にも出ていたと思う。けれど、カノンは反論を呑みこんだ。
それまで孤独にうずもれていたカノンの生に光を与えてくれたのはミロだ。カノンが、アテナに対するような義務感でもなく、兄に対する同族愛でもない、純粋な愛情を覚えたのはミロが初めてだった。だから、黄金聖闘士という立場上難しいことは承知の上だったが、カノンの一番がミロであるように、カノンはミロの一番になりたかった。
1時間前まで、カノンは、二人を繋ぎ止める「今」だけがあれば良い気がしていた。しかし、サガの口からミロのことが漏れた今になって急に、置いてきぼりにされたような不安感が押し寄せてきていた。
「…お前は知らないだろうが、」
もったいぶってサガが口火を切ったとき、カノンの愛して止まない小宇宙が近付きつつあった。カノンはよっぽどサガを急かしてやろうかと思いながら、ここで機嫌を損ねてはこれまでの我慢が無駄になると判断し、次の言葉を待った。サガは最後にあのにくたらしい笑みをもう一度見せると、得意げに語った。扉が開く直前のことだったから、きっとタイミングを計っていたに違いない。
「ミロは私の弟子になりたいと言って泣いたのだ。」
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