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黒サガの的確な表現が見つかりません!
仕事中にもやもや考えていた話ですが、仕事中に考えていたときの方が面白かった気がします。



聖戦前、ミロはサガと出来ていたらしい。
出来ていたらしい、と伝聞形なのは、そのときの名残が影も形も見つからないからだ。スカーレットニードルを打たれてからミロに首ったけなカノンは、にわかには信じがたい事実に、ミロを諦めさせるためのはったりだろう、くらいに思っていたのだが、周囲から事実だと聞かされて呆気に取られた。
なぜならば、サガとミロの関係は、とてもそんな風には見えないからである。
傍目にも、サガがミロとの距離を縮めたがっているのはわかるのだが、ミロのあっけらかんとした態度は同僚に対するものでしかない。あれほど情に篤いミロが愛人から秋波を向けられて無視できるとも思えないので、性質の悪い冗談だろう。絶対そうだ。
事実、カノンはサガがミロに言い寄って袖にされている場面を目撃していた。あまりに速攻で断られているので、物陰で耳をそばだてていたカノンは馬鹿笑いをして姿を見つかる始末だった。その直後、勢い込んで告白した自分もあっさり袖にされたので、人のことをとやかく言えないが、そのときはサガの失恋が大いに笑えたのである。アテナの国でいうところの、人の不幸は蜜の味、というやつだ。その後、人を呪わば穴ふたつ、と来るのだが。
ともあれ、それから紆余曲折を経てセットでお得な感じでどうにか蠍の恋人の座にありついた双子である。この辺、カノンの要領が無駄に良いので、普通に考えれば潔癖なミロが二股をかけるなど考えられもしないのだろうが、説得に成功した。いささか、催眠の域に達していた感じは否めない。
それから、ミロを間に挟んで双子のわだかまりも解け、双児宮で、カノンとしてはことのほか幸せに暮らしていたつもりだったのだが。
双子の兄は、そうではなかったらしい。


世界中の負というものをすべてかき集めたような雰囲気のサガに、任務から帰って来たカノンは言葉に詰まった。理由は、こんな兄の姿を見たことがなかったのが一つ、それから、こんな兄に関わりあいたくないという切実な思いが一つである。
しかし、3日3晩不休で勤めた5日にわたる任務から帰って来て、ベッドでミロと離れていた時間を埋める作業に勤しめる、というとき、いざとなって集中できないのも嫌だ。カノンは双子座の黄金聖衣を脱ぐと、腹を決め、絶望感を漂わせているサガに話しかけた。
「おい、どうした?また何かしでかしたのか?」
カノン的には、入浴シーンを侍従に見られてついうっかり殺してしまったとか、カノンがいないのを良いことに双児宮内を全裸で歩き回っていたら通報されてしまったとか、そういうことを想定して尋ねたのだが、サガの返答は想像の範疇にないものだった。
「ミロは、私では駄目だというのだ。」
世界中の負というものをすべてかき集めたような雰囲気に相応しい、世界中の負というものをすべてかき集めたような声色だった。
サガの言葉に、カノンは戦慄した。サガが袖にされたからといって自分まで袖にされる理由はないのだが、多少毛色が違うとはいえまったく同じ外見に同スペック、明日は我が身である。原因を解明しないことには、いつサガと同じ運命を辿るともわからない。
この際、サガには潔く犠牲になってもらって、カノンはカノンの道を模索すべきだろう。
カノンはあっさりサガを人柱にする腹を決めると、ひじょうにナーバスになっているであろう兄を刺激しないよう、やんわり尋ねた。
「なぜ、そのような会話になったのだ?」
「ミロは、ミロは…偽教皇時代のときの私が好きだと。」
震える声でサガが言う。
なるほど、偽教皇時代のサガと言えば別名黒サガと呼ばれ、聖域で好き勝手やらかしていた頃のサガである。海龍として隠遁生活を営んでいたカノンは良く知らないのだが、胃痛を知らず、負けも知らず、ずいぶんブイブイ言わせていたらしい。
しかし、カノンにとっては、あくまで、伝聞の話である。胃痛を知らないサガなど、カノンの辞書にはいない。
だが、そう考えると、聖戦前にミロとサガが出来ていたという話もがぜん真実味を帯びてきた。カノンはサガの肩に腕を回して慰める体面を保ちつつ、サガに囁いた。
「それならば、黒サガ時代のお前に戻ってミロの心を射止めれば良いではないか。」
悪魔のささやきである。カノンが恋敵を応援するような真似に出たのは、単純に好奇心からだった。聖域で好き勝手やらかしてた頃のサガなど、面白そうではないか。カノンはぜひとも一度見てみたかった。
カノンはサガの隣に腰を下ろすと、グラスに酒を注ぎ、サガに勧めた。こういう面白そうなことは、カノンだけではなく、相手にも責任があると思わせるのが肝要である。
しばらくすると、アルコールでぐずぐずになったサガは空になったグラスをテーブルに叩きつけ、腕に顔を埋めた。
「私とて、黒サガ時代の記憶はある…ミロが少し手荒いくらいが好きなことは重々承知なのだ!だが、あんないたいけで愛らしいミロにそんな真似出来るはずがないだろう!」
「え、そうなのか…?!」
初耳である。
カノンとミロのセックスは、多少ミロが奔放すぎるきらいはあるものの、いたってノーマルなものだった。盛りのついた犬のように、とまではいかないものの、そこは成人男子がくんずもつれずするので、ベッドの悲鳴が賑賑しい感じにはなるのだが、断じてアブノーマルではない。
何となく、開かなければ良かったパンドラの箱を開けてしまった気分だった。
しかし、こんな新事実が露見したからには、今夜のために資料として聞いておきたい。
固唾を飲むカノンへ、腕に顔を突っ伏したサガが涙ながらに語った。
「当時のミロは私のことを神のように崇め、私が言えば白も黒になるほど従順に慕ってくれていたというのに、なぜ、なぜ、私では駄目なのだミロ…!」
さすがのカノンも、たぶんそんな調子だからだろう、と言わないだけの分別は持ち合わせていた。カノンはサガの肩に手をかけ、顔を上げさせた。
「ちょっと待て、サガ。」
「カノン…、」
何と優しい弟を持ったのだろう、とサガが感嘆する間もなく、カノンが言う。
「少し手荒いくらいのくだりをもう少し詳しく。」
「…。」
しょせんは、カノンの優しさなど見せかけで利己心からであった。サガはカノンの手を振り払うと、心の鬱積を吐き出した。
「昔のミロは幼くいとけなく、私の言うがまま為すがままだったのに…あの頃のミロはどこに行ったのだ…。私が視線で促すだけで、あんな真似やこんな真似も、実に恭順な振る舞いでしたというのに。アテナが再来されるまで、聖域に閉じ込めて情欲に耽るあまり市井で噂が経とうと、凛とした姿でまったく意に介さなかったあの、さながら昼は淑女夜は娼婦を地で行っていたミロが!」
「お前、まさかの自慢か!うざいな!」
「うるさい!私のミロを自慢して何が悪い!」
「俺のミロだ!」
それから、小一時間もがなりあっただろうか。
不毛な口論であった。
肩で息吐いていたカノンは、同じく肩で息吐くサガを見やり、嘆息した。
「さっきも言ったが、お前は、黒サガ時代に戻れば良い。お前と黒サガとでは根本的に精神構造が違うのだから、今のお前がミロに手荒い真似を出来ないと言っても、何の支障にもならないだろう。」
「カノン、お前は…!」
「そうだ…黒サガに戻れと言っているのだ!」
のちに考えるに、カノンがここまで大きく出たのは寝不足のせいだろう。
しかし、そんなこととは露知らないサガは驚愕によろめいた。
「私に、また、アテナに牙を剥けというのか…愚弟よ…。」
「無理をしてアテナに刃を向ける必要もあるまい。ただ、あのころのように利己的に生きれば良いと言っているだけだ。」
「それが出来れば、最初から苦労は…、」
「お前には絶対的なまでに能動的な負のオーラが欠けているのだ。絶望とか哀しみとかそういうしみったれた感情ではなく、もっと、理不尽な世界への怒りに身を焦がせ!お前ならば出来る!」
これが普段であれば愚弟の戯言と言って流せる台詞も、したたかに酔っていては、まともに取りあうことしか出来なかった。サガは身を奮い立たせ、椅子から立ちあがった。
「わ、わかった…やってみよう。」
「そうだ、行け!」
眉間にしわを寄せて意識を集中させるサガに、悪乗りしたカノンは発破をかけた。見る間に、サガの毛先が黒くなっていく。世界中の負というものをすべてかき集めたような雰囲気は、今や、おどろおどろしいものに変化を遂げていた。
黒サガの復活も時間の問題と思われたとき、ふいに、双児宮のプライベートルームの扉が開いた。
きんきらきんの髪は、見まがうはずもない。いとしのミロである。
「サガ、いるのか…?」
「ミロ!」
にわかに、サガの背負っていた負のオーラが拡散した。
「ええい、これくらい戻ってこれられるのなら、最初から黒くなるな!愚兄!」
なじるカノンを意に介さず、サガはミロに抱きついた。いつもは取らない奇矯な行動だが、酔っ払いの特権である。
ミロは適当にサガをあしらいながら、任務から無事に帰還を果たしたカノンを労い、周囲を見渡した。
「さきほど懐かしい小宇宙を感じて、来てみたのだが…俺の気のせいだったのか。」
首を傾げながらミロが言う。その寂しそうな横顔に、カノンは胸を詰まれた思いで問いかけた。
「もしかして、黒サガのか。」
「?何だ、お前たち、何か事情を知っているのか?」
柳眉をきりりと吊り上げ、不満そうに問い質すミロを前に、カノンは洗いざらい全て白状した。ここで機嫌を損ねられては、せっかくの夜が台なしだ。
サガの相手などするのではなかったと後悔を募らせるカノンを後目に、ミロはいささか叱責めいた口調で、うなだれるサガに言い渡した。
「この蠍座の黄金聖闘士のミロが、なぜどうでもいい者に抱かれねばならん。俺は別に、サガでは駄目だとは言っていない。」
「ミロ…!」
「ただ…、」
この、ただ、が曲者だった。
恋するものの顔で、ミロが嘆息した。
「昔に比べて物足りないだけだ。」
仄かに頬を上気させて放たれたミロの一言が、サガのみならず、カノンにまでトドメをさしたことは言うまでもない。

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