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珍しく、ミロが男です。
現在書けたところまで。

あと、こぬこを拾ってしまい、こぬこに夢中でまったく妄想が手につきません!!!!
明日は資格試験だっていうのに!どうでもいいけど!
(これ、書き切るのかな?!)


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5月30日。
本来であれば、酒を手に星を仰ぎ、その守護の下生まれたことを祝う日なのだが、カノンの誕生日はあいにくの雨となった。この調子では、丸一日降り続けることだろう。
ミロはウゾのボトルを傾けながら、眼前でひそやかな笑みを湛えてこちらを眺めているカノンを一瞥した。ひそやかな、と表現したのは、誰だったか。ミロはもうすっかり失念してしまったが、言い得たもので、カノンは他者の視線に気づくと、顔つきを改めることが多かった。
ひそやかな、笑み。
ミロはこれが少々気にくわなかった。嬉しければ笑い、悲しければ泣く。この当たり前の感情表現を出来ないものが、聖域にはあまりに多い。しかし、わざわざ指摘することのほどでもない。自分の考えを押しつけることこそ、愚かだ。ミロには理解出来ないが、彼らには彼らなりの理由があって、己の感情を隠すのだろう。それにカノンから、海闘士であった自分が幸せになるなど言語道断だから、と返事がきようものならば、目も当てられないではないか。
せっかくの、誕生日なのだ。
「カノンも呑むか?」
ウゾのボトルを掲げて問いかけてみれば、カノンがひそやかな笑みを湛えて頷き返して来る。一瞬、カノンの目に何か強い感情が翻ったように思えたが、ミロは気づかなかったふりをした。それが、ミロには理解しがたいものだったからだ。カノンがミロに執着を見せる理由など、何一つとしてない。
確かに、SNがきっかけで心を赦したカノンとミロの距離は、聖戦後、ますます縮まっていた。最近では、シベリアを拠点とするカミュよりよほど親交を深めており、酒を交わすことはもちろんのこと、夜更けに二人きりで組み手をすることも間々あった。周囲の迷惑になるから、と、小宇宙の使用を抑えて行うのだが、近年、聖域内部の事情によりアルデバランとばかり組み手を交わしていたミロにとって、それは実に有意義な時間だった。
現在のところ、勝率は五分五分といったところか。もちろん、本気の組み手ではなく、戯れのようなものだったが、「小宇宙を使用せずとも、十分すぎるほど強い。」その事実は、ミロの中でカノンの株をおおいに上げていた。一番、感心したのは、闘いに癖がまったくないことだ。多かれ少なかれ、普通、戦闘には癖が出るものだ。それが長所となり、短所ともなりうる。ミロの場合、それは挑発に乗りやすいことであり、右利きゆえに右手の方が攻撃の主体であり、攻撃を受けた際には右腕より左腕で身体を庇う傾向にあることだった。しかし、カノンに限って言うならば、そのような癖が一切ない。ミロはそれをすごいと思った。だから、思ったままをそっくりそのまま、カノンに告げた。
あのときのカノンの返答がなんだったか忘れてしまったが、珍しくまごつくので面白いと感じた印象は覚えている。
そろそろ時刻は1時になろうとしている。ついカノンとの会話に興じてしまったが、暇を告げるのが筋だろう。何しろ、今日はカノンの誕生日だ。仕事のあとは夜を徹して馬鹿騒ぎが繰り広げられるに決まっている。ならば、今のうちに、少しでも寝かせておいてやるのが優しさというものだ。
「すまん、長居をしたな。そろそろ帰る。」
ミロは重い腰を上げ、ウゾの空のボトルとグラスを手に立ち上がった。もちろん、発言どおり、双児宮から退去するつもりだった。
そのとき、不意に腕を強く引かれたミロはたたらを踏んだ。
「何だ、カノン。」
「…すまん。」
そう言いながらも、カノンがミロから手を離す様子はない。一瞬、ミロはいぶかしんだ。カノンの行為に、一抹の必死さのようなものを覚えたからだ。しかし、次の瞬間には、カノンの制止は当然のものだと思い、ほがらかに笑い声を立てた。
「ああ、悪かった。そういえば、肝心のものを忘れていた。誕生日プレゼントとは何が良い?俺に出来うる範囲で、お前の望みを聞き届けてやろう。」
せっかく、こうして日付変更のときを一緒に過ごしたのだ。最初に祝ったのが自分であったならば、最初にプレゼントをくれてやるのも自分でしかるべきだろう。
カノンへのプレゼントを買うつもりですっかり忘れていたことなど棚に上げて、尊大に問いかけるミロに、カノンの目が光った。また、あの色だった。それが何なのか問い質す前に、カノンが口を開いた。
「…何でも良いのか?」
「ああ、男に二言はない。」
「ならば、組み手で勝ったら抱かせてくれないか?」
わずかに、手首をつかむ手に力がこもる。
さすがのミロをもってしても、どういう意味で、と問いかけるのはあまりに無粋なように思われた。同時に、カノンの見せる執着の意味を知った。
おそらく、ミロは鼻先で笑ってなかったことにしてしまっても良かったのだろう。それによってカノンは多少傷つくかもしれないが、表面上、二人の関係が壊れることはなかったに違いない。だが、そうするにはあまりにもミロは誠実すぎ、同時に、プライドが高すぎた。
迷うことはない。組み手で勝てば済む話だ。勝率は五分五分。酒が入っているとは言え、自分が本気を出せば勝てないわけがない。
いつも周囲からたしなめられる根拠のない自信が、ミロの胸に湧きおこった。
それに、体格や腕力で勝る相手と戦うコツは、アルデバラン相手で嫌というほどよくわかっている。



アルコールで火照った身体に小雨が気持ちいい。
ミロはストレッチをしながら、黙りこくっているカノンを一瞥した。自分から勝負を持ちかけておきながら、後悔を見せるとは。わざわざ指摘するつもりはないが、カノンのそういうところは生涯理解できそうにない。
「お前はストレッチしなくて良いのか?」
わずかに顎を持ちあげて問いかければ、カノンが頷いてみせる。ミロは準備運動の必要性について口うるさく説明しようとしたが、そのような状況ではなかったことを思い出し、口をつぐんだ。
妙なことになった。今更ながらミロの胸に後悔が渦巻いたが、嘆いても詮なきことだった。賽はとっくに投げられてしまった。投げられた瞬間受け止めてしまえば良かったものを、放置した責任はミロ自身にある。今のミロに出来ることと言えば、その軌道に手を加えることくらいしかなかった。
「では、始めるとするか。ルールはどうする。一本勝負で良いか?」
「お前がそれを望むならば。」
ミロは小首を傾げた。
望んでいるのかと問われると心もとなかった。ミロが一体何を望んでいるというのか。カノンとセックスすること、カノンと絶縁すること、セックスを賭けて勝負すること?どれも望んでなどいない。すべてが馬鹿らしく、しかし、すべてが現実だった。
ミロは顎を引き、雨で額に張りつく前髪を払った。
「一本勝負で決まりだな。他はいつもどおりで良いな?」
「ああ。」
始まりはいつもと変わらない。石畳4つ分距離を取り、カノンと相対する。双児宮からの灯りを受けて、カノンのかんばせが闇夜に浮かび上がる。いつになく険しい顔つきだ、と思う間もなく、勝負の火ぶたは切って落とされた。



最初に仕掛けたのは、いつもどおり、ミロだった。せっかちに振るわれた右手をカノンがいなす。いつもならば笑声と共に弾かれる拳を無言のまま見送ったミロは、身体を回転させると、左肘を打ちこんだ。
幾度となく、カノンの拳を防ぎ、お返しに打ちこんだことだろう。ぐっしょり濡れた髪が重みを増し、背中に張りつくのが邪魔でたまらない。天の恵みたる雨を恨むなどとんだお門違いな話ではあるが、この瞬間ばかりは、ミロは天を恨まずにいられなかった。
ぐい。
そのとき、思いがけなく髪を引かれたミロがたたらを踏んだ瞬間、カノンはその脚に向かって足払いをかけた。地面が迫ってくる。だが次の瞬間には、あ、と思う間もなく、ミロはカノンに抱きとめられていた。無様に地面へすっ転ぶ寸前で抱きとめられるという屈辱的な展開に、プライドの高いミロは内心歯噛みした。
戦闘のさなかに敵の髪を掴んで転ばせるなど、誇り高き黄金聖闘士であるミロは一考したことすらなかった。カノンの卑怯な手法をののしっても良かったのかもしれないが、それ以上に、おかしさがこみあげてきて、どうしようもなかった。
完敗だった。
ミロはこみ上げる感情を抑えきれず、腹を抱えて笑いだした。笑うべきではなかったのかもしれない、と、眉をひそめるカノンの表情を見て反省もしたが、どうにも抑えようがなかった。
きっと、カノンは最初からこの瞬間に標準を合わせて、今まで組み手を交わして来たのだろう。一瞬、確信にも近い疑念がもたげたが、だからどうなのだ、と思い直して、ミロは眦の涙を拭った。
自分よりもカノンは強い。そして、だからこそ、カノンは勝利をおさめた。
その事実だけで十分だった。
「ああ、お前と来たら、本当に強いな!それで、どうする?」
「…どう、とは。」
「今すぐ褒美が欲しいか?」
ミロは目を丸くしているカノンの首筋に張りついた髪を除け、唇を寄せた。カノンの動揺を示すように、頸動脈は強く脈打っている。先ほどまでの組み手だけが原因とは思えなかった。ミロはそんなカノンの首筋に舌を這わせ、ゆるく歯を立てた。
ミロ自身は、同性との経験はない。異性とのセックスも片手で足りるほどだ。デスマスクにそそのかされるまま経験だけは積んでみたが、それほど興味を持てなかったこともあり、色事を遠ざけてきた。
そんなミロであったが、今この瞬間、すごく興奮していた。
ぐいとカノンの腕を引き、押し倒した身体の上へ馬乗りになる。ぐっしょりと水気を吸って重くなったシャツを脱ぎ捨てると、カノンが息を飲む声が聞こえた。ミロは構わずカノンの頬を両手で包み込むと、勢い込んで唇を重ねた。前歯で上唇を押し上げ、舌を差し込む。ウゾの味を色濃く残す熱い口内に、自分が本当にカノンにキスをしているのだという事実を突きつけられ、ひどくめまいがした。それ以上に押し寄せるのは興奮だ。
そのとき無粋にも、性急に先へ進もうとするミロをカノンが制止した。カノンはキスに無心に没頭しているミロの身体を引き剥がすと、むっと顔をしかめてみるミロの頬に唇を押しつけた。もどかしさにじれったさを覚えるようなそっけないキスだったが、その行動一つで、どれほどカノンが切羽詰まっているのかわかってしまったミロは何も出来なくなった。
「ミロ、ここでは駄目だ。」





つづく?
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