忍者ブログ
雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※後天性女体化です。

祝えてない気がするー!
でも、おめでとー!

※本番シーンは飛ばしましたが、R18です。




拍手





五月末と言えば、ギリシャでは麗らかな日差しが気持ちの良い季節だが、静まり返った早朝は別だ。十二宮の階段は朝露に濡れており、肌寒さを感じた覚えたミロは毛布を手繰り寄せ、身を縮こませた。くしゃみがこぼれた。



今日5月30日は、双子座の黄金聖闘士の誕生日ということで、黄金聖闘士が勢ぞろいする予定となっていた。上流階級育ちのアテナがそのようなイベントを殊の外好んだのだ。仲違いの減らない黄金聖闘士を暗に黙らせる手段のようにも感じられる、とムウがこぼしていたが、それはうがちすぎた考えというものだろう。
昨晩のミロは、カミュと酒を飲む気満々だった。シベリアに引きこもっていることもあって、このような招集でもない限り、滅多に聖域へ顔を出さない親友は、ミロの要請に心おきなく応じた。
華やかな外見のせいで騒々しい印象のあるミロだが、カミュといるとき、口火を切ることは滅多にない。このときもミロは、とりとめなく氷河やアイザックのことを話すカミュの話に耳を傾けながら、黙って酒を飲んでいた。床についたのは、日付が変わった頃だったように思う。
ミロはわいた欠伸を噛み殺すと、シャツを脱ぎ捨て、まだ話し足りなさそうにしているカミュを問答無用でベッドに引きこんだ。大の男が一つベッドで眠るなど、世間では薄ら寒い話なのかもしれないが、二人の間ではよくあることだ。
思いの外、疲労がたまっていたのだろう。体力的にはそうでもないのだが、アテナのご同伴は、上流階級社会に疎い自分にとってとても気疲れするものだという自覚はある。深い眠りに、夢も見なかった。
そして、1時間前。
強く肩を揺さぶられて起きると、目の前に呆れ顔のカミュから蔑視を向けられていた。ミロはたじろいだ。まさか、親友からそのような視線を向けられることになるとは思っていなかったからだ。これで心当たりの一つでもあれば話はまた違ってくるのだろうが、思い浮かぶ原因など何一つなかった。
「…どうやって忍び込んだのかは知らないが、さっさと立ち去るが良い。恥を知れ。」
困惑するミロを他所に、カミュはミロを毛布で包んでひょいと摘まみあげると、まるで迷い込んだ猫の子を追い払うような有無を言わせぬ調子で天蠍宮から放り出した。あまりの勢いに、ミロはたたらを踏み、せいぜい転ばないように気をつけるだけで精一杯だった。そう、精一杯だったのだ。
そこで、ミロは何かがおかしいことにはたと気付いた。黄金聖闘士が体勢を維持するだけで精一杯などという状況は、まず、ありえない。
最初に気になったのは、手足の尺が違う点だった。驚いたミロが視線を向けると、どういうわけか、鍛え上げた身体は細く頼りなくおぼつかなく見えた。いつもならば体中に満ちている小宇宙の息吹も感じられない。何より、身体が――とりわけ胸元が――異様に重かった。
ミロはカミュが厚く巻きつけた毛布を恐る恐る捲り上げ、絶句した。眼下には、全裸の女の肉体があったからだ。
裕に5分以上、ミロは固まっていた。それからしばらく経って、ミロの頭はフル回転を始めた。混乱と現実逃避でほとんど空回りに近い回転だったが、あまり頭を使う機会のないミロにしては目覚ましい働きだった。
Q1ジーンズやパンツは見につけていたはずだが、なぜ、全裸なのか。この疑問はすぐさま解消された。これだけ尺が違うのだ。きっと、サイズが合わなくて脱げてしまったに違いない。
Q2なぜ、女になってしまったのか。この大問題に対する回答が、現時点で思い浮かばないのが非常に残念だが、それも聡明な親友の手にかかればすぐさま答えを得られるに違いない。
しかし、それも、親友がこの扉を開けてくれれば、の話だ。
ミロは恨めしげな視線を、固く閉ざされた天蠍宮の扉へ向けた。親友の危機に気づかず、それどころか、主を宮から追い出すなど、とんでもない所業だ。だが、小宇宙の片鱗も感じられない見知らぬ女が全裸でベッドにいたら、カミュでなくとも、放り出すだろう。ミロはカミュへ深い同情を覚えたが、考えるまでもなく、それどころではなかった。
選択肢は2つだ。このまま、ここでカミュが目覚めるのを待ち続けるか、場所を移動するか。
猶予はあまり残されていなかった。双子座の誕生日とは言え、所詮、平日である。いつ何とき、同僚がこの階段を上って来るともわからない。アテナが心を配らざるを得ない事態からも見受けられるように、個性の強い同僚たちがあまり人格に優れていないのは揺るぎない事実だ。このような身体で頼りない毛布だけを見につけた状態で見つかりでもしたら、笑われるのがオチだろう。ミロだって、屈強で鳴らす同僚がそんな憂き目にあっていたら、腹を抱えて笑う自信があった。
となれば、身を隠せる場所へ移動しなければならない。プライドの高いミロは、笑われるなど我慢ならなかった。
童虎は不在。最近は、教皇宮に寝泊まりしているためサガも自宮にはいない。乙女座のシャカはそもそもミロだと気付かないか、気付いたところで関わるのを億劫がって無視するのが関の山だろう。無論、脳筋のアイオリアに頼るつもりなどないし、女癖が悪いことで定評のあるデスマスクに近付くつもりも毛頭ない。アルデバランは気の良いやつだから笑いはしないだろうが、押しかけたところで問題の解決にはほど遠い。ムウは面白がって目を輝かせるか、呆れて鼻で嗤うかの二択だ。いずれにせよ、期待して良いとは思えないし、貴鬼にこのような姿を見られるのも御免だ。
そうすると、おのずと選択は限られてくる。階段を駆け上れれば、また結論も変わって来るのだが、嘆いても仕方がない。本当は、ミロを猫かわいがりしているアフロディーテか、常識人のサガを頼ることができれば一番良かったのだが。
ミロは腹を括ると、一か八か、カノンを頼るつもりで階段を駆け足で下り始めた。
順調な人生を送って来たとは言い難い黄金聖闘士の中でも、もっとも紆余曲折経た人生を歩んでいるのが、この双子座のカノンだということは周知の事実だ。サガに比肩する実力と、常人では匹敵しがたいほどの人生経験。そういう話をする機会に恵まれたことはないが、カミュに負けず劣らず博識だとも聞く。あれほど美貌に秀でているのだから、あちこちから誘いはあるだろうに、デスマスクと違って、女の噂もまったく聞いたことがなかった。
何より肝心なのは、聖戦の断罪を契機に、ミロとは篤く親交を結んでいることだ。きっと、ミロの現状を我がことのように憂えて、ミロでは思い浮かばないような良案を考えてくれるに違いない。
ミロは淡い期待を胸に、階段を駆け下り始めた。
いつもならば30分とせずに辿り着くことのできる双児宮は、今日に限って遠かった。勝手の違う身体のせいだ。何より、無駄に存在を主張する胸がこれ以上ないくらい邪魔だった。勢い込んで走ることができたのは、10分ほどだろうか。ミロは処女宮へ辿り着かないうちに体力が尽きてしまった。
それでも、ミロは額に滲んだ汗を乱暴に拭うと、意地と根性でのろのろ歩き始めた。黄金聖衣を見に纏い常に胸を張っているミロが、薄手の毛布だけを頼りに肩を落として歩く姿はいつになく哀れみを催したが、幸か不幸か、見ているものもいない。ミロは情けなさに鼻を啜りあげながら、唇を噛み締めた。あまりのショックに、ううう、と咽喉から声にならない嗚咽が漏れ出た。
何か悪い夢でも見ているような気分だった。実際、これは、悪い夢なのだろう。なぜ、このような明け方に、自分の守護する宮を追い出され、途方に暮れなければならないのか。
理解不能である。
五月末と言えば、ギリシャでは麗らかな日差しが気持ちの良い季節だが、静まり返った早朝は別だ。十二宮の階段は朝露に濡れており、肌寒さを感じた覚えたミロは毛布を手繰り寄せ、身を縮こませた。くしゃみがこぼれた。
双児宮に辿り着いたのは、それから50分後のことだった。ようやく視界に映り込んだ双児宮にミロはぱっと顔を輝かせると、毛布がずり落ちないようしっかり引き寄せ、駆け足で双児宮のプライベートルームを目指した。まだ5時前だ、カノンは寝ているだろう。
双児宮は他の宮に比べて内部が入り組んだ造りになっているのだが、幾度となく足を運んだことがあるので、ミロは寝室まで迷わず一直線に向かうことができた。ミロは寝室の扉の前で一度立ち止まり、この状況をどう説明したものか一瞬悩んだものの、どうせ大した説明はできないのだからと説明義務を放棄して、毅然とした態度でカノンに臨むことにした。
ミロは抜き足差し足忍び足で寝室内に身を滑り込ませると、カミュに問答無用で閉め出された経験から、追い出される前に少しでも時間が稼げるようあらかじめ扉の鍵を閉めておいた。黄金聖闘士が本気を出せば、鍵の有無など問題にならないが、さすがのカノンも鍵を開けるのを億劫がって、自分の寝室の扉を破壊するような真似はしないだろう。
寝室には、酒の臭いが充満していた。ミロは顔をしかめた。薄暗くて目を凝らさないといけないが、床には空になった酒瓶がごろごろ転がっているようだ。
もしかして、カノンは一般に言うアルコール中毒なのだろうか。そうだとしたら、付き合いを考え直す必要がある。だが、年に一度の記念日に浮かれてのことならば、そうとやかく言うまい。
そんなことを思いながら、ミロは慎重にカノンの眠るベッドへ近付いていった。しこたま飲んだわりに、カノンは平気そうな顔で枕にしがみついている。兄であるサガと違って、常時全裸癖こそないようだが、寝るときは全裸派のようだ。
こうして呑気そうに寝ているさまを見てしまうと、起こさなければ話にならないのだが、何となく起こすのも気が引ける。だいたい、年の一度しかない誕生日に、わざわざこのような面倒事に巻き込んで良いものだろうか。
根が変に真面目なミロが真剣な面持ちで悩んでいると、不意に手を掴まれ、ベッドに引きずり込まれた。ミロはびっくりした。黄金聖闘士の意地で悲鳴こそあげなかったものの、心臓がばくばく言っている。カミュのときのように放り出されるものと覚悟も決めたが、そういう様子でもない。逞しい腕でがっちりホールドされたミロは、眉根を寄せ、どういうわけか嬉しそうに頬をすり寄せてくる同僚を、不可解なものを見る眼で見つめた。
もしかして、寝ぼけているのか、こいつ。
「こんな朝っぱらからあんなに熱い視線を向けて…まだ物足りないのか?」
「おい、何を言っている。頭は大丈夫か?」
あまりに近すぎる距離にどうにか距離を置こうと腕に力を込めるが、いっかな放してもらえそうにない。所詮、小宇宙の使えない体では黄金聖闘士に太刀打ちできないのだ。ミロは認識を新たにしながら、さわさわと撫で擦ってくるカノンに引きつった笑みを向けた。経験の少ないミロでも、何となく、これはまずい状況だというのは理解出来た。
ベッドサイドの灯りを点けたカノンが、しげしげと腕の中のミロを見つめた。
「今日は女のミロなんだな。俺はもう少し上背があった方が好みだが、…まあ、サガの趣味をとやかく言うのは止めよう。」
そう言って、カノンが唇を寄せてこようとするので、ミロは慌てて顔を背けた。
「カノン、俺がわかるのか!」
「わからないはずがないだろう。サガも味な真似をする。」
唇を捉え損ねたカノンが、項へ舌を這わせてくる。ぞわぞわと悪寒を覚えたミロは、歯を食いしばって固く目を瞑った。少しでも気を抜くと、声から変な声が漏れ出そうだった。これは本当にまずい。ミロは躍起になってカノンの拘束を解こうとしたが、無駄に強靭な肉体を誇る黄金聖闘士をかよわい女の身で振り払えるはずもなかった。
事情に精通しているらしい様子のカノンに山ほど訊きたいことはある。
しかし、手口を開けばはしたない声が出てしまいそうで怖い。
「ミロ…、」
耳元で熱っぽく囁きながら、カノンが下腹部に熱く固いモノを擦りつけてくる。いよいよこれはまずい。これが現実ではなく悪夢なのだとしても、同性の同僚に抱かれる夢を見るなど変態以外の何ものでもない。なぜ、このような明け方に、自分の守護する宮を追い出され、同僚に迫られ、途方に暮れなければならないのか。
理解不能である。
ミロは情けなさに鼻を啜りあげながら、唇を噛み締めた。あまりのショックに、ううう、と咽喉から声にならない嗚咽が漏れ出た。カノンはそんなしゃくりあげるミロを前に柔らかな笑みを浮かべると、宥めるようにキスの雨を降らせた。これが恋人たちの一幕ならば効果のほどもあるのだろうが、野郎からキスされまくっても、ミロとしてはら寒いだけである。
カノンは硬直したミロを一瞬いぶかしそうに見やったものの、いつになく朗らかな笑みを浮かべると、より一層ミロを抱き締める腕に力を込めた。
「初めて…という趣向か、そういうのも嫌いじゃない。」
鼻歌でも歌い出しそうな調子である。
何を勘違いしているのか甚だ疑問だが、踏ん張って閉じようとしている足の付け根部分へカノンのモノを擦りつけられそうになってやきもきしている今のミロには、カノンを問い質している余裕などない。生まれて初めて、ミロは力なきものの立場に立たされていた。
怖気からわななくミロの唇へカノンの唇が押しつけられ、唇へ沿って舌が這わされる。催促するように舌先で唇を突かれるが、無論、招き入れるつもりなどない。
口を一文字に引き延ばしてそれ以上の接触をきっぱり拒むミロの様子に、カノンは頬を綻ばせ、右手で、一心不乱に抵抗しているミロの両手を束ねると、左手でミロの鼻先を摘まんだ。
息苦しさに、ミロの顔が紅潮してくる。
それでも、ミロは口を開けるのを必死で耐えた。口を開けたが最後、何をされるかわからないほど子どもではない。男とディープキスをするくらいなら、死んだ方がましだ。
そう思った瞬間、あっさり左手を放され、安堵した矢先にカノンに脇腹をくすぐられた。脇腹は、知る人ぞ知るミロの弱点である。予想だにしなかった展開に、ミロは思いっきり声を上げて笑ってしまった。
「あは、あはははは!や、止めっ…、ん!ふ、…っ、」
笑い声を上げた途端、口内に侵入してきた舌に口蓋をくすぐられる。ぬるりとした感覚に、ミロはびっくりしてカノンの舌に歯を立ててしまったが、常に小宇宙を燃やしている黄金聖闘士にとっては、虫に刺されたようなものだろう。カノンはミロの口内を好き勝手に蹂躙した後、唇についた唾液をぺろりと舐めとった。どういう理屈なのか、そのときのカノンは腹立たしいほどイケメン面だった。驚きの格差社会である。
ミロは一発カノンを殴ってやろうと奮起した。もはやこれが現実なのか悪夢なのか、判断すら困難な状態だったが、どちらにしても、ミロにはカノンを殴る権利があるはずだ。
しかし、両手を頭上でまとめあげられ、下腹部に臨戦態勢に入っているモノを押しつけられている状況では、カノンを殴るのは不可能だった。
それでも、一矢報いたい一心で、ミロは足を振り上げた。カノンのモノを蹴りつけるためである。だが、カノンは笑い交じりにミロの抵抗を抑え込むと、ミロの太腿の裏へ指を這わせた。ぞぞぞ、と悪寒が背筋をのぼってくる。同時に、どういうわけか、下腹部が熱くなった。
そんな反応をしてしまう自分が信じられず、ミロの眦から涙があふれた。歯の根が合わず、カチカチ音が立つ。誉れ高い黄金聖闘士たる俺が、同性の手管に感じてしまうなど。ありえない事態に、穴があったら入りたかった。
肩を震わせてとうとう泣き出してしまったミロに、カノンは僅かに眉尻を下げた。
「ミロ、泣くな…そういうつもりではなかったんだ。」
両手首から、カノンの手が放された。カノンはミロの身体を膝の上へ抱き上げると、宥めすかすように頭を撫でた。いつもならば子供扱いするなと振り払いたくなる手つきだったが、このときばかりは、心に沁みた。
「ふっ…、か、カノン…。」
ようやくわかってくれたか。
ほっと胸を撫で下ろして見上げれば、カノンが気まずそうに呟いた。
「泣かれると、ますます興奮する。」
意味がわからなかった。ミロがぽかんと間抜け面を晒している間に、カノンは易々とミロの身体をベッドに押し倒すと、ミロが必死に守ろうとしてきた部分へ指を這わせ、あろうことか中へ挿入してきた。
双児宮にミロの悲鳴が響き渡った。



それから、1時間後。
カノンに好き勝手されてしまったミロは、捨て鉢な思いで、カノンのモノに舌を這わせていた。カノンが言うには、ミロはいつも、事後にカノンのモノをこうして綺麗にしてやっているらしいのだ。くたびれきった体では口を開けることすら億劫だったが、これで終わるなら、さっさとやって終えたいのが実情である。はたしてこれは現実なのか悪夢なのか、などという議論はもはやどうでも良いから、夢も見ず、泥のように眠りたかった。
おそらく、カノンが言うようにこれは幻影なのだろう。幻影に違いない。そうでなければ、やっていられない。
夢の中のカノンは、ミロの見知っているクールさなど微塵も持ち合わせていなかった。ミロに罵倒されようと泣きつかれようと、喜色満面で相好を崩しっぱなしだった。しかも、言動の端々に感じるおっさん臭が少し痛く、ミロは年齢差を痛感させられるのだったが、そのおっさん臭はどこか微笑ましく、可愛らしくさえあった。
側面へ舌を這わせ、促されるまま先端を口に含むと、カノンのモノが次第に固くなってくる。こびりついている血の入り混じった体液に、男のくせに処女を散らされた我が身を思い、居たたまれなさを覚えながら、ミロはカノンをいかせることに専念した。ミロ自身もともと男なので、どこをどうすればいかせられるかは手に取るようにわかる。
限界が近付いたのか、慈しむようにミロの髪を梳いていたカノンの手に力がこもった。
ミロはカノンのモノを可能な限り頬張り、意趣返しのつもりで、上目遣いにカノンを見上げた。熱に浮かされたような目のカノンと視線があい、その瞬間、カノンが達した。口内に苦みと熱が広がった。
そのとき、予期していた事態にもかかわらず、ミロはびっくりしてうっかり暴挙に出てしまった。精子が気管に入って咽たのもあって、カノンのモノに歯を立ててしまったのだ。
さすがに黄金聖闘士とはいえ、達するときは小宇宙を燃やすどころではなく無防備ということか、カノンが悲鳴を上げてうずくまった。正直、ものすごく情けない姿だったが、そんな状況に陥らせてしまったミロがとやかく言える立場ではない。ミロはしばらく咽続けた後、背中を丸めて苦しんでいるカノンの様子を窺った。
「か、カノン…そ、その………面目ない。すまんっ。だ、大丈夫か?」
「大丈夫ではない、むちゃくちゃ痛い…。」
眦に大粒の涙を浮かべたカノンが答える。ミロはカノンが血を拭きとれるよう、無言でベッドサイドのティッシュボックスを手渡してやった。
今や、シーツの流血跡はカノンとミロのモノで半々だ。これでお相子だろう、と言い張れるほど、ミロは図々しい性質ではないし、何より、女の流血と男の流血ではまったく意味合いが変わってくることくらいわかっている。ミロは疲れ切っていたことも忘れて、なにくれとなくカノンの世話を焼き始めた。
そのとき、前触れもなく、急に、カノンがはっとした様子で面を上げた。
「待て…もしかして、こんなに痛いということは、幻朧魔皇拳による幻影ではないのか?!」
訊かれても困る。
「知らん。俺が知りたいくらいだ。俺にわかることと言えば、起きたらどういうわけか女になっていて、カミュに天蠍宮から追い出されたのでここに来たことくらいだ。」
あとはよほどお前の方が精通しているだろう、と溜め息まじりに返してやると、見る間にカノンの顔色は青くなっていった。
「サガの誕生日サプライズでないとしたら、お、お前は…、」
「俺は?」
「まさか、お前は、お前は…蠍座の黄金聖闘士ミロ、なのか?!」
異なことを言う。ミロは呆れ顔でカノンの耳を引っ張り、怒鳴りつけた。
「お前、俺が俺だと気づいていないであのような狼藉に及んだのか?!俺のことをミロと連呼していたではないか!」
「それはお前からミロの体臭がしたからだ!まさか本物だと思うわけがないだろう!小宇宙も感じなかったから、いつもの都合の良い夢の幻影版くらいの認識だったぞ!サガも味な真似をする、と感心して損した!」
ミロにしても、最初からどうもカノンとの会話が噛み合わないと思ってはいたのだ。ミロは顔色を失くしているカノンに絶対零度の蔑視を向けたまま、口端を微かに持ち上げた。小宇宙が操れれば、また別の出方もあるのだろうが、今はこれで精一杯だった。
もっとも、カノンにはこれ以上ないくらい効果を発揮したようだ。
「……カノンよ、ところで、」
猫撫で声を出すミロに、カノンが身を震わせて、後ずさった。額には、恐怖心からか脂汗が滲んでいる。震え声で、カノンが哀願した。
「い、言うな。」
無論、言及しないつもりはない。ミロは満面の笑みを浮かべて、カノンの脇へ右手をついた。
「カノン、」
身をすり寄せながら、ふっと耳元へ息を吹きかけてやれば、カノンがうろたえる。ようやく捉えた意趣返しの機会に、ミロは蠍の毒針を研ぎ澄ませた。
「頼む、忘れてくれっ!」
気が狂わんばかりにカノンが絶叫する。しかし、ミロは慈悲の心を放棄した。これまで良いように無体を働かれたのだから、当然だ。正義は、こちらにある。最後は諦念から興じてしまったが、痛いし怖いし散々だったのだ。ミロはぐいとカノンの耳を引っ張った。
「…お前、俺でいつもどういうことを妄想しているんだ?」
双児宮にカノンの悲鳴が響き渡った。



結局、ミロが女になった事実は聖域中に知られることになった。誕生日パーティーをホストとして滞りなく迎えるため、教皇宮から双児宮へ帰ったサガが、弟の寝室から響き渡って来る騒音をいぶかしんで様子を見に来たせいだ。扉に鍵などかけたことのないカノンが鍵をかけていることもあって、サガは何か異常事態が起きているのではないかとかなり気を揉んだらしい。
罵声を浴びせながら手当たり次第にものを投げつけている全裸のミロと、ひどく動転した様子で頭を下げ謝罪を口にし続けているカノンに目を丸くしたサガは、事情を知らないなりに、仲裁に入ろうとした。しかし、そのとき、あからさまに寝乱れたと思われるベッドとシーツの血痕が視界に入ってしまい、弟に負けず劣らず気が動転してしまったサガは、カノンとミロの仲を認めるよう、シオンへ上申しに向かってしまったのだ。あとで聞いたところによると、サガは、ミロが女になっていた事実には気づいていたものの、そういうこともあるだろう、とさほど気に留めてはいなかったらしい。大物である。
シオンに問答無用で教皇宮へ呼びつけられ、ことの次第を問い質されたのが4時間前のこと。
当然、噂を聞きつけた同僚たちからは笑われるし、デスマスクには爆笑された上に誘惑されるし、ムウには他人事だと思って面白がられるし、カミュには曖昧な笑みを向けられるし、散々だった。
極めつけは、聖域を不用意に動揺させた罪で謹慎させられているミロとカノンの様子をいつになく軽やかな足取りで見に来たアテナの一言である。
「カノン、誕生日おめでとうございます。」
「アテナ、身に余る御言葉ありがとうございます。」
「うふふ、プレゼントを喜んでいただけたようで何よりです。でも…、ミロが小宇宙を使えないのは問題ですね。早急に原因を調査しましょう。」
「あ、あの…アテナ?」
「あなたへの恋心を募らせるあまり、カノンがあなたを諦めるために聖域を出ていく覚悟を決めたと耳にして、私としても、居ても経ってもいられなかったのです。ミロ、心優しいあなたであれば、私の気持ちもわかってくれるでしょう?まさか、こんなに事態が早く進むとは思いもしませんでしたが…両脇に美麗な双子を侍らせる特権を失いたくなかったんですもの。」
おそらく、最後の一言がアテナの本音だろう。二の句を告げないミロへ、アテナが小首を傾げて微笑みかけた。
「見目麗しい美青年二人が思いを寄せあう姿は私的に好きですが、シオンからは、産めよ栄えよ、ということで、聖戦で失われた聖闘士を少しでも増やすために同性愛は固く禁じられてしまいましたし…。許して下さいね、ミロ。」
「は、はあ。」
アテナの爆弾発言に、ミロは曖昧に了承の意を示した。他に、何と返すことができただろう。無二の女神と尊ばれる神の御言葉である。これが予断を許さない聖戦の最中ならばともかく、このような平穏な世の折に、一介の黄金聖闘士ごときが反論できるわけもない。
「二人のこれからの人生に幸多からんことを!ふふ、カノンとミロの子供はどのような黄金聖闘士になるのでしょうね。洗礼式には呼んでください。ああ、その前に、結婚式を挙げないといけませんね。」
そう言うなり、軽やかな足取りで鼻歌まじりに性質去っていくアテナの後ろ姿を、ミロは呆然自失の呈で見守った。わけがわからなかった。
何か悪い夢でも見ているような気分だった。実際、これは、悪い夢なのだろう。なぜ、明け方から自分の守護する宮を追い出され、同僚に押し倒され、それを聖域中に周知徹底された挙げ句、女神の爆弾発言で途方に暮れなければならないのか。
理解不能である。
考えてみれば、昨夜、夢も見ないほどぐっすり眠りに落ちた時点で何かしらの術をかけられていたに違いない。あまり考えたくないことだが、ご同伴を務めたときに一服盛られたのかもしれなかった。女神の手にかかれば、何でもありである。
「フッ…女神公認か。サッカーチームを編成できるくらい子供を作ろうな、ミロ!」
すべてがばれてしまった今、カノンはかつてないほど絶好調だった。おそらく、事情はどうあれ、身体を重ねてしまった事実も大いにものを言っているのだろう。昨日までの取り繕った体面を捨て去り、愛情駄々漏れで桃色の空気を撒き散らしている同僚に迫られるというのは、元同性としては、身の毛もよだつ恐るべき状況なのだが、そんなミロの心理状態はカノンの思案の外である。
正直、これほど情熱的に求められて、ミロも満更悪い気もしな――いや、いやいやいや、そんなことはない。すごく気持ち悪い。
さきほどの失言は、雰囲気に呑まれかけてつい思い浮かべてしまった戯言だ。こんな風に情緒の欠片もなく隙あらば押し倒そうとする男のことなど、好きなわけあるものか。サガに比肩する実力と、常人では匹敵しがたいほどの人生経験。カミュに負けず劣らず博識で、アフロディーテに次ぐくらい眉目秀麗だろうと関係ない。勝手に人をズリネタに使うような変態は御免だ。絶対、好きなわけなどあるものか。
「ふざけるな。また冥界に顔でも出して来い。そして二度と戻ってくるな。…っ、って、変なところを触るな馬鹿!や、やだ…っ、そこ、だ、……んんっ!!」
開き直った神とハイスペックな変態ほど恐ろしいものはない。
ミロはのしかかってくるカノンの身体を半べそで押し退けながら、我が身の不幸を呪うのだった。




変態カノンさんはいつもいとしのミロを脳内でアレコレ弄ってムフフな妄想をしていたのでした。
妄想と現実の区別がついてないカノンさんに押し倒されて好き勝手されてしまったミロの話。
…これ、誕生日祝えてるのか…??
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
たっぴ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者ブログ [PR]