雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
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カノミロ です。
ホ モ です。
ちまちま書いていますが、ぜったいに無理だこれ。
と思ったので、プロット大爆発。
と思ったけど、少し詳細にプロットを立ててみたら、
「もうこれが文章でよくね?」
という感じになりました。
*
カミュとともに、ミロはカミュの故国ブルーグラードに来ていた。
貴族社会の影響が色濃く残っており、領主の持つ力は絶対的なものだ。北方諸民族が治める東シベリア、それも永久凍土という特殊で閉鎖的な土地に、独裁国家が誕生しようとしていた。
政治に不介入を貫いてきた聖域だったが、ハーデスの復活を目前に控えた今、無用な混乱は避けたい。
教皇の指示により、先遣隊として派遣されたのが、ミロとカミュの二人だった。カミュは土地に明るく、ミロは数学的才能がある。急速に力をつけつつあるブルーグラードがどこから資金を得ているのか、調べるのが今回の任務。
ブルーグラードの行政を司る屋敷に忍び込んだ二人は、帳簿を調べ始める。数学に強いミロ。極東民族の言語にも精通しているカミュ。ミロが捕鯨に関する計算がおかしいことに気づき、改竄はすぐに見つかった。
侵入の痕跡を残さないよう、カミュとミロは神経を使って、屋敷から抜け出る。屋根をいくつか跳び越え、敷地外へ着地する。
この後の調査を引き継ぐのは、カミュだ。
その晩、ブルーグラード領主の屋敷では仮面舞踏会が催された。
表向きは政治献金を募るためのパーティーだが、その実態は、戦争の支援者を募るためのパーティーだ。正体を知られては困る高貴な身分のものたちが、仮面で顔を隠し出席していた。カミュはその中に、幾人か見知ったブルーグラードの有力者を見出し、顔をこわばらせる。
故国がここまで腐敗しているとは。
カミュはミロに適当に料理を食べて適当に切り上げるよう言うと、席を立つ。ミロが一緒にいては、目立って仕方ない。ミロの金髪は、この白で埋め尽くされたブルーグラードにあって、見ることの叶わない太陽のように眩しく、否応なしに人目を引いた。
カミュが「捕鯨」に関する証拠を集め、確証を得るため、領主の執務室がある別館へ向かうと、ミロは適当に料理を食べ始めた。美味そうな料理が放置されているのが許せなかったのだ。
そんなとき、ふと強い視線を感じ、ミロは顔をあげた。
正面には、ブルーグラードの領主のみ座ることを許された椅子がある。いかにも権力者が好みそうな、金細工にベルベット張の趣味の悪い椅子だ。最初に領主によって行われた演説で、他のものは何人たりとも座ってはならないという悪趣味なパフォーマンスは実に腹立たしかった。
その傍らに、見たことのない男が立っていた。オペラ座の怪人の扮装だろうか。仮面をつけていても、男が端正な顔立ちをしているのがわかる。
ミロが自分に気づいたことを悟ると、男はふっと笑みをたたえ、ゆっくり近づいてきた。
「聖域が一体何の用だ?政治には不介入を決め込んでいるはずだろう。」
男の発言にとっさに言い訳をしそうになったミロは口を噤んだ。
男は、聖域を知っている。元聖闘士候補生だろうか。
しかし、ミロはすぐさま考えを否定した。外部の人間でも、聖域の事情に明るい者は、いなくはない。権力者はいつでも神秘の力に焦がれ、その象徴である聖域を欲してきた。今回もそのケースだろう。
下手に情報を開示して、聖域の不利益となってはまずい。
黙りこむミロに、男が眉を上げた。
「何だ?用事があって来たんだろう。だんまりか?」
男の言いように血の気の多いミロはむっとしたが、反論をこらえた。男は領主を一瞥し、それからミロの全身をしげしげと見つめた。
「人が多すぎる。庭園へ行くぞ。ここよりはマシだろう。」
屋敷の庭園は、一面ガラス張りの温室に設けられていた。客人用の別館に通じる道でもあるここでは、永久凍土で珍しい花も観賞できる。
しかし、今宵、人々が愛でる花は植物ではなかった。
時折、耳を突くのは嬌声だろうか。ブルーグラードの夜気に当てられ、たじろぎ、耳を赤くするミロの様子に、男がさもおかしそうに笑声を漏らした。
「何がおかしい!」
噛みつくミロに男が言う。
「聖域の黄金聖闘士さまはこういうのはお嫌いか。」
「…!俺のことを。」
「知っているに決まっている。」
そう言うなり、男は乱暴な仕草でぐいとミロの顎を持ち上げ、まじまじと見つめた。男の目に揶揄めいた興味がひらめいた。
「そのアンタレスのような煌めき…お前は、蠍座の黄金聖闘士ミロだろう。」
男はきつく睨みつけるミロから、ぱっと手を離した。
「噂には聞いていたが、黄金聖闘士がこんなガキだとはな。笑わせてくれる。」
何よりも誉れとしている黄金聖闘士の座を嘲られ、黙っていられるはずがない。ミロは男に殴りかかった。しかし、右腕が空を切ったかと思うと、そのままの勢いで引き寄せられた。感情に任せたものとはいえ、黄金聖闘士の攻撃を避けるとはただものではない。この男は、一体。
吐息がかかるほどの距離に男の唇があった。
「逸るな、ガキが。ここでは人目を引く。他の場所でなら、相手をしてやらんこともないが…、」
そこで男は言い渋った。頭に血がのぼっていなければ、ミロも男のそれがふりだとわかっただろう。男は唇を歪めてみせた。
「罠と知っていてかかるだけの度胸が、はたしてお前にあるものか。」
「…馬鹿にするな!」
鼻先で嗤った男はミロを自由にすると、さっさと歩き出した。迷いのない男の様子にミロは逡巡したものの、好奇心と、それ以上に憤慨が勝って、後を追うことにした。ここでブルーグラードの不正の証拠を手に入れれば、カミュはおろか、教皇も諸手を上げて喜ぶだろう。
危険は承知の上だった。
別館に踏み入れ、次第に人気がなくなっていった。男は領主からかなり優遇されているようだ。男の部屋はワンフロアをまるまる利用していた。注意を払い、興味深そうに観察するミロを意に介さず、男は進んでいく。
部屋に足を踏み入れた途端、ミロは男に胸倉を掴まれ、中に投げ出された。ミロは咄嗟に受け身を取ったが、幸い、ベッドの上に投げ出されたため、思ったほどの衝撃はなかった。だが、甘い考えだった。
小宇宙を高めようとしたが、何の反応もなかった。この部屋には、特殊な加工が施されているらしい。
やはり、罠だったのだ。
驚愕するミロを乱暴にベッドに捩じ伏せたカノンは、馬乗りになり、タイを緩めながら口端を歪めた。先ほど庭園で見た嘲笑だった。
「お前のように聖域の現実を知らないガキを見ると、反吐が出る。」
男の手が乱暴にミロの襟元にかけられ、勢いよく、布地を裂いた。急に素肌に触れた冷たい空気に、ミロの肌が粟立った。
これから何をされようとしているのか、経験のないミロにはまったくわからなかった。まさか、同性同士でそのような行為に及べるなど、これまでの15年の人生の中で、潔癖なミロは考えたことすらなかった。
それでも、ミロは男から逃げようとして、身体を捩った。抵抗を封じ込めるためか、両手は頭上にまとめ上げられ、動かせそうにない。足を振り上げて蹴りつけようとすると、殴りつけられ、口内に血の味が広がった。
ぎりりと歯を食いしばり、怒りに燃え滾る目で睨みつけるミロの様子に、男が満足そうに目を眇めた。
「黄金聖闘士ともあろうものが、貶められる気分はどうだ?」
ミロの首筋に舌を這わせながら、男が言う。はじめての感覚にぞくぞくした。自分の感覚が信じられなかった。ミロは慌てて首を振って男を払い除けたが、男は気にした風には見えず、まるで、ミロの先ほどの衝動がわかっているかのように口端をつりあげた。
はじめて、ミロは心から焦燥を覚えた。
「俺がお前に身を持って、所詮お前は世間知らずで甘ちゃんなガキだったと教えてやる。感謝するんだな。」
男の空いている方の手が、ミロのズボンにかかった。
「お前が無造作に甘受している立場を、俺は、望んでも得られなかった。だから決めたんだ。俺をこんな風にしたやつらから、お前たちから、奪い返してやる。」
日の射さないブルーグラードは、朝も薄闇に閉ざされている。
身体が軋んだ。持て余すほどの熱を吐き出された身体は、膿んだように熱を孕み、重かった。それ以上に、心が重かった。
ベッドから降り、床に散らばった自分の服をまとった男は、目覚めてなおずっと黙りこんでいるミロへ、部屋に備えつけてあった服を投げて寄越した。生きて帰されるようだ。
少なくとも、ハーデスと無関係の任で、殺されなかっただけましと捉えるべきか。
しかし、意に染まない無体を働かれたというのに、ミロは乱れてしまった自分が許せなかった。
男はそんなミロの胸中を読んだのか、ベッドに片膝をつき、いつになく優しい仕草でミロの頬へ手を添えた。やけに甘い、まるで悪魔の囁きのような声だった。
「また遊びたくなったら来い。相手をしてやる。」
うそぶく男の手を、ミロは振り払った。これ以上触れられたら、何かが決定的に壊れてしまう気がしたのだ。
「ふざけるな…!」
「ふざけてなどいるものか。お前はさぞ好い声で鳴くだろう…昨夜のように。」
はじめて味わった恐怖はミロを委縮させ、正常な判断力を失わせた。相手にならないというのに、懲りずに殴りかかろうとするミロの攻撃を男はあっさり受け流すと、ミロから身体を離した。
「そうだ。お前たちの教皇によろしく伝えてくれ。」
揶揄する声が癇に触る。それでも、ミロは自分を変えてしまった存在に問いかけずにいられなかった。
「…貴様の名は?」
男が嗤った。自嘲めいた嘲笑だった。
「やつには、名など伝えずともわかるだろう。わかったら、さっさと出ていけ。俺も暇ではないのでな。お前の相手をしてやれるのも限度がある。」
男から退室を促されたミロは、憤りのまま乱暴に服をまとうと、部屋から飛び出した。
聖闘士にとって、怪我は珍しくない。痣や切り傷も、すでに見慣れている。
だのに、これまでのものとは何かが違う気がして、ミロはカミュとの宿泊先に戻る最中も、手首の痣を隠すようにずっと握り締めていた。
*
「わかるか?俺の形のお前の中が広がっているのが。」
と、カノンに嘲笑させたかったです。
R18になるので書けませなんだ。
ホ モ です。
ちまちま書いていますが、ぜったいに無理だこれ。
と思ったので、プロット大爆発。
と思ったけど、少し詳細にプロットを立ててみたら、
「もうこれが文章でよくね?」
という感じになりました。
*
カミュとともに、ミロはカミュの故国ブルーグラードに来ていた。
貴族社会の影響が色濃く残っており、領主の持つ力は絶対的なものだ。北方諸民族が治める東シベリア、それも永久凍土という特殊で閉鎖的な土地に、独裁国家が誕生しようとしていた。
政治に不介入を貫いてきた聖域だったが、ハーデスの復活を目前に控えた今、無用な混乱は避けたい。
教皇の指示により、先遣隊として派遣されたのが、ミロとカミュの二人だった。カミュは土地に明るく、ミロは数学的才能がある。急速に力をつけつつあるブルーグラードがどこから資金を得ているのか、調べるのが今回の任務。
ブルーグラードの行政を司る屋敷に忍び込んだ二人は、帳簿を調べ始める。数学に強いミロ。極東民族の言語にも精通しているカミュ。ミロが捕鯨に関する計算がおかしいことに気づき、改竄はすぐに見つかった。
侵入の痕跡を残さないよう、カミュとミロは神経を使って、屋敷から抜け出る。屋根をいくつか跳び越え、敷地外へ着地する。
この後の調査を引き継ぐのは、カミュだ。
その晩、ブルーグラード領主の屋敷では仮面舞踏会が催された。
表向きは政治献金を募るためのパーティーだが、その実態は、戦争の支援者を募るためのパーティーだ。正体を知られては困る高貴な身分のものたちが、仮面で顔を隠し出席していた。カミュはその中に、幾人か見知ったブルーグラードの有力者を見出し、顔をこわばらせる。
故国がここまで腐敗しているとは。
カミュはミロに適当に料理を食べて適当に切り上げるよう言うと、席を立つ。ミロが一緒にいては、目立って仕方ない。ミロの金髪は、この白で埋め尽くされたブルーグラードにあって、見ることの叶わない太陽のように眩しく、否応なしに人目を引いた。
カミュが「捕鯨」に関する証拠を集め、確証を得るため、領主の執務室がある別館へ向かうと、ミロは適当に料理を食べ始めた。美味そうな料理が放置されているのが許せなかったのだ。
そんなとき、ふと強い視線を感じ、ミロは顔をあげた。
正面には、ブルーグラードの領主のみ座ることを許された椅子がある。いかにも権力者が好みそうな、金細工にベルベット張の趣味の悪い椅子だ。最初に領主によって行われた演説で、他のものは何人たりとも座ってはならないという悪趣味なパフォーマンスは実に腹立たしかった。
その傍らに、見たことのない男が立っていた。オペラ座の怪人の扮装だろうか。仮面をつけていても、男が端正な顔立ちをしているのがわかる。
ミロが自分に気づいたことを悟ると、男はふっと笑みをたたえ、ゆっくり近づいてきた。
「聖域が一体何の用だ?政治には不介入を決め込んでいるはずだろう。」
男の発言にとっさに言い訳をしそうになったミロは口を噤んだ。
男は、聖域を知っている。元聖闘士候補生だろうか。
しかし、ミロはすぐさま考えを否定した。外部の人間でも、聖域の事情に明るい者は、いなくはない。権力者はいつでも神秘の力に焦がれ、その象徴である聖域を欲してきた。今回もそのケースだろう。
下手に情報を開示して、聖域の不利益となってはまずい。
黙りこむミロに、男が眉を上げた。
「何だ?用事があって来たんだろう。だんまりか?」
男の言いように血の気の多いミロはむっとしたが、反論をこらえた。男は領主を一瞥し、それからミロの全身をしげしげと見つめた。
「人が多すぎる。庭園へ行くぞ。ここよりはマシだろう。」
屋敷の庭園は、一面ガラス張りの温室に設けられていた。客人用の別館に通じる道でもあるここでは、永久凍土で珍しい花も観賞できる。
しかし、今宵、人々が愛でる花は植物ではなかった。
時折、耳を突くのは嬌声だろうか。ブルーグラードの夜気に当てられ、たじろぎ、耳を赤くするミロの様子に、男がさもおかしそうに笑声を漏らした。
「何がおかしい!」
噛みつくミロに男が言う。
「聖域の黄金聖闘士さまはこういうのはお嫌いか。」
「…!俺のことを。」
「知っているに決まっている。」
そう言うなり、男は乱暴な仕草でぐいとミロの顎を持ち上げ、まじまじと見つめた。男の目に揶揄めいた興味がひらめいた。
「そのアンタレスのような煌めき…お前は、蠍座の黄金聖闘士ミロだろう。」
男はきつく睨みつけるミロから、ぱっと手を離した。
「噂には聞いていたが、黄金聖闘士がこんなガキだとはな。笑わせてくれる。」
何よりも誉れとしている黄金聖闘士の座を嘲られ、黙っていられるはずがない。ミロは男に殴りかかった。しかし、右腕が空を切ったかと思うと、そのままの勢いで引き寄せられた。感情に任せたものとはいえ、黄金聖闘士の攻撃を避けるとはただものではない。この男は、一体。
吐息がかかるほどの距離に男の唇があった。
「逸るな、ガキが。ここでは人目を引く。他の場所でなら、相手をしてやらんこともないが…、」
そこで男は言い渋った。頭に血がのぼっていなければ、ミロも男のそれがふりだとわかっただろう。男は唇を歪めてみせた。
「罠と知っていてかかるだけの度胸が、はたしてお前にあるものか。」
「…馬鹿にするな!」
鼻先で嗤った男はミロを自由にすると、さっさと歩き出した。迷いのない男の様子にミロは逡巡したものの、好奇心と、それ以上に憤慨が勝って、後を追うことにした。ここでブルーグラードの不正の証拠を手に入れれば、カミュはおろか、教皇も諸手を上げて喜ぶだろう。
危険は承知の上だった。
別館に踏み入れ、次第に人気がなくなっていった。男は領主からかなり優遇されているようだ。男の部屋はワンフロアをまるまる利用していた。注意を払い、興味深そうに観察するミロを意に介さず、男は進んでいく。
部屋に足を踏み入れた途端、ミロは男に胸倉を掴まれ、中に投げ出された。ミロは咄嗟に受け身を取ったが、幸い、ベッドの上に投げ出されたため、思ったほどの衝撃はなかった。だが、甘い考えだった。
小宇宙を高めようとしたが、何の反応もなかった。この部屋には、特殊な加工が施されているらしい。
やはり、罠だったのだ。
驚愕するミロを乱暴にベッドに捩じ伏せたカノンは、馬乗りになり、タイを緩めながら口端を歪めた。先ほど庭園で見た嘲笑だった。
「お前のように聖域の現実を知らないガキを見ると、反吐が出る。」
男の手が乱暴にミロの襟元にかけられ、勢いよく、布地を裂いた。急に素肌に触れた冷たい空気に、ミロの肌が粟立った。
これから何をされようとしているのか、経験のないミロにはまったくわからなかった。まさか、同性同士でそのような行為に及べるなど、これまでの15年の人生の中で、潔癖なミロは考えたことすらなかった。
それでも、ミロは男から逃げようとして、身体を捩った。抵抗を封じ込めるためか、両手は頭上にまとめ上げられ、動かせそうにない。足を振り上げて蹴りつけようとすると、殴りつけられ、口内に血の味が広がった。
ぎりりと歯を食いしばり、怒りに燃え滾る目で睨みつけるミロの様子に、男が満足そうに目を眇めた。
「黄金聖闘士ともあろうものが、貶められる気分はどうだ?」
ミロの首筋に舌を這わせながら、男が言う。はじめての感覚にぞくぞくした。自分の感覚が信じられなかった。ミロは慌てて首を振って男を払い除けたが、男は気にした風には見えず、まるで、ミロの先ほどの衝動がわかっているかのように口端をつりあげた。
はじめて、ミロは心から焦燥を覚えた。
「俺がお前に身を持って、所詮お前は世間知らずで甘ちゃんなガキだったと教えてやる。感謝するんだな。」
男の空いている方の手が、ミロのズボンにかかった。
「お前が無造作に甘受している立場を、俺は、望んでも得られなかった。だから決めたんだ。俺をこんな風にしたやつらから、お前たちから、奪い返してやる。」
日の射さないブルーグラードは、朝も薄闇に閉ざされている。
身体が軋んだ。持て余すほどの熱を吐き出された身体は、膿んだように熱を孕み、重かった。それ以上に、心が重かった。
ベッドから降り、床に散らばった自分の服をまとった男は、目覚めてなおずっと黙りこんでいるミロへ、部屋に備えつけてあった服を投げて寄越した。生きて帰されるようだ。
少なくとも、ハーデスと無関係の任で、殺されなかっただけましと捉えるべきか。
しかし、意に染まない無体を働かれたというのに、ミロは乱れてしまった自分が許せなかった。
男はそんなミロの胸中を読んだのか、ベッドに片膝をつき、いつになく優しい仕草でミロの頬へ手を添えた。やけに甘い、まるで悪魔の囁きのような声だった。
「また遊びたくなったら来い。相手をしてやる。」
うそぶく男の手を、ミロは振り払った。これ以上触れられたら、何かが決定的に壊れてしまう気がしたのだ。
「ふざけるな…!」
「ふざけてなどいるものか。お前はさぞ好い声で鳴くだろう…昨夜のように。」
はじめて味わった恐怖はミロを委縮させ、正常な判断力を失わせた。相手にならないというのに、懲りずに殴りかかろうとするミロの攻撃を男はあっさり受け流すと、ミロから身体を離した。
「そうだ。お前たちの教皇によろしく伝えてくれ。」
揶揄する声が癇に触る。それでも、ミロは自分を変えてしまった存在に問いかけずにいられなかった。
「…貴様の名は?」
男が嗤った。自嘲めいた嘲笑だった。
「やつには、名など伝えずともわかるだろう。わかったら、さっさと出ていけ。俺も暇ではないのでな。お前の相手をしてやれるのも限度がある。」
男から退室を促されたミロは、憤りのまま乱暴に服をまとうと、部屋から飛び出した。
聖闘士にとって、怪我は珍しくない。痣や切り傷も、すでに見慣れている。
だのに、これまでのものとは何かが違う気がして、ミロはカミュとの宿泊先に戻る最中も、手首の痣を隠すようにずっと握り締めていた。
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「わかるか?俺の形のお前の中が広がっているのが。」
と、カノンに嘲笑させたかったです。
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