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生まれて初めて試しに投稿してみようと思い立って書いていた一次創作です。
途中までは良かったものの途中からものすごーく迷走した事実に気づき、ハッとして、今!です。

ほわいとはーとに投稿するつもりだったので無難に恋愛メインのはずが、
SF?
ホラー??
世界観が謎すぎです。


ちょっと頭を冷やしてきます!
やり直さねば…!



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平成二十五年、夏。
この日、山口県下関駅に降り立った直刀は、顎を伝う汗をぐいと拭った。容赦なく照りつける日差しにじわりと不快な暑さを覚える。直刀は肩に下げたボストンバッグをかけ直すと、フリーペーパーを扇子代わりにしているさくらを見やった。
直刀の上司であるさくらは、十人中九人が認める美女だ。女性ならば誰もが羨むような黒髪に、ほどよく日に焼けた肌。僅かに眦が垂れている眼はいつも眠たげに翳っているが、ひとたび仕事となれば、目まぐるしく感情が浮かんでは消えることを直刀は知っている。
多少性格に難があるのだが、この仕事柄、それも愛嬌というものだろう。少なくとも、さくらに惚れ抜いている直刀は愛嬌だと思っている。
そうでなければ、いくら牢人の身とはいえ、怪事を専門的に扱う「鷹」になろうなどと思うはずがない。
「早く涼みたいわね。暑くてたまんないわ。到着する時間がわかってるはずなんだから、迎えに来てくれていれば良いのに。」
「忙しいんでしょう。」
「どこが忙しいのよ。だって、漁には出られないはずでしょう?」
ふっくらとした唇を尖らせて、不満げにさくらが言う。
一月ほど前から、下関港には死体が揚がるようになった。
下関は壇ノ浦があるため日本有数の霊地であり、死体が揚がること自体は珍しいことではない。そのため、警察も当初は向う見ずな観光客が肝試しに出て命を落としたものと結論を下していた。
しかし、それが連日続くとなれば、やはり異常である。
事態を重く見た警察は、捜査に乗り出したが難航。事件はいっこうに解決する気配を見せないまま、徒に時間だけが過ぎていった。
そうして先日、痺れを切らした網元たちによって、帝都から直刀たちが呼ばれることとなったのである。
「まあ、良いわ。先に現場を見てきちゃいましょう。」
「その間に依頼人の方が迎えに来たらどうするんです?」
「そのときはそのとき、何とかなるでしょ。」
現地に到着して五分で、これである。
「さくらさん、待ってください。俺、所長からくれぐれも依頼人に失礼のないようにってきつく言われているんです。」
「どこが失礼なのよ?言いわけが立たない理由ならともかく、現地視察は仕事のうちでしょ。早期の原因究明は依頼人にとっても悪い話じゃないはずよ。」
確かに一理ある。一理あるのだが、依頼者と入れ違いになる可能性をまったく考慮しないさくらに、直刀は何と返せば良いのかわからず言葉を飲んだ。
「何よ、文句あるの?」
「ないです。」
「ないならさっさと行きましょうよ。汗かいちゃう。」
さくらの荷物まで持たされた直刀にとっては幸いなことに、壇ノ浦の古戦場跡はすぐ見つかった。
記念碑の建てられた広場は、鉄柵が設けられており、海に身を乗り出せないようになっている。鼠返しが取り付けられているのは、海岸から平家蟹が這い上がって来ないようにするためだろう。
怪異で有名なこともあり、もっとおどろおどろしい場所を想像していた直刀は思いがけない景勝にあっと息を飲んだ。
惜しむらくは、今回、直刀たちは観光しに来たわけではないということだ。
さくらは鉄柵に立てかけたキャリーケースから矢筒と矢籠を外すと、鉄柵に片足をかけた。
「邪魔な柵ね。」
この日のさくらは、薄黄緑のワンピースにつばの広い帽子、白のミュールというモダンな洋装だったが、軽々と柵を乗り越えてしまった。
「何してるの?さっさと来なさい。」
はだけたワンピースから覗いた足に目を奪われた直刀の胸中を知ってか知らずか、さくらがおかしそうに笑う。直刀は一瞬荷物のことが気にかかったが、あたりに人気がないことを確認すると、後に続いた。
「海に入るんじゃないわよ。」
平家蟹を避けて歩く直刀に、さくらの指示が飛ぶ。直刀は大仰に頷き返しながら、海に目を凝らした。
良く見れば、海中を蠢くものがある。魚のようだが、魚にしては変わっている。影は藻のようなものを広げて回遊していた。
「今年も祭事は滞りなく行われたのよね?」
「そのはずです。ニュースでも見ましたし。」
壇ノ浦の戦い以降、下関では多くの怪事が起こるようになった。理由には諸説あり、一般には、安徳天皇の死と共に三種の神器である天叢雲剣が失われたことが原因なのではないかと考えられているが、定かではない。
やがて、天叢雲剣が失われたこともあって、八岐大蛇が安徳天皇と操っていたという説が市井でまことしやかに流れるようになると、朝廷も重い腰を上げざるを得なくなった。
そういう経緯で初めて鎮魂の儀を執り行われたのは土御門天皇の御代、承元三年のこと。安徳天皇に釣り合うようにと、数えで六つの娘が生贄に捧げられた。
翌年この儀が原因で後鳥羽上皇の不興を買った土御門天皇は在位を退くことになるのだが、鎮魂の儀自体は数百年にわたって続けられることとなる。生贄に捧げられるのは、決まって年端もいかない娘であった。
今日では流石に人柱を立てることはなくなり、独逸由来のホムンクルスが代用されるようになった。
しかし、渡来したものは錬金術だけではない。
ホムンクルスの人権を確立しようとする団体と宮内庁の悶着は裁判沙汰にまで発展している。直刀がテレビで見たのは、プラカードを掲げて声高に祭事を反対する人権団体のニュースだった。
「犠牲者の大半は北前船の乗組員だそうですが、警察は情報を伏せているんですよね?どうしてわかったんですか?」
「無人の船と死体を結びつけるのはそう難しいことじゃないわ。」
船上が血でしとどに濡れていれば、尚更だ。さくらは入所したばかりでものを知らない直刀の発言に、場違いな笑い声を上げた。
「依頼人は宮内庁の介入を嫌がっている。そりゃそうよね、「鎮魂は、ホムンクルスでは駄目だった」なんていう結論に飛びつかれでもしたら困るもの。」
生贄は、地元の娘から選ばれるのが慣例である。漁にも出られず、北前船も来航しないとなれば、死活問題に違いない。
実際、噂が流れ始めてから下関に立ち寄る北前船は両手で数え切れるほどにまで減少しているという。
さくらは周囲を見回し、異変らしい異変がないことを目視すると、背後の直刀を振り返った。
「船はもう撤去しちゃったみたいね。だいたい見たし、もう戻りましょうか。」



直刀とさくらの出逢いは、去年の秋に遡る。
春に中等学校の卒業を控え、就職先を求めて上京した直刀は、就職に乗り気ではなかった。上京するにも費用がかかることを考えれば、甘えたことを言っている自覚はあったが、本心なのだから仕方ない。
直刀の実家は海東といって、小さいながらも敷地内に道場を持つ由緒正しき武家だ。次男坊である直刀も、侍になるため、しかるべき教育を叩きこまれて来た。直刀という名も、「直向きに刀を振るう」ようにとつけられた名である。
しかし、世は文明開化。武士が尊ばれた時代は終わりを告げていた。
景気の高騰に続く不況のあおりを受けて、多くの武家が士官先を失い、蔑んでいた商家に頭を下げねば生きていけない時代がやって来た。それは海東家も免れなかった。
だが、食うに困って働かなければならなくなったとはいえ、剣だけを叩きこまれて来た男に何が出来るわけでもない。故郷を追われるようにして帝都に出てきたものの、それで何かが変わるわけではなかった。直刀自身が変化を望んでいないのだから、当然だ。
武士であることだけを望まれ、武士として生きることを決意した人間に、時代が変わったのだから変われと言ってもどだい無理な話ではあった。
大戦と共に鎖国を解かれ、勢い込んで洋物を取り込んだ帝都は雑然としていた。直刀は気の向くまま、人波を掻き分けて先を急いだ。どこか目的地があったわけではない。ただ、せかせかと足早に行く人々の群れに立ち止れば置いていかれそうな錯覚を抱いて、自然と急ぎ足になってしまったのだ。
大通りに面した店は洋風の装飾で煌びやかに輝いているが、一歩裏道へ足を踏み入れれば、見慣れた地蔵の立ち並ぶ闇が広がっている。レースのふんだんに使われた洋装に身を包みハイカラを気取る若造もいれば、目の周りを朱で隈取りした白塗りの芸者もいる。プードルとかいう白い毛玉に覆われた子犬には度肝を抜かれた。
すべてが真新しいはずなのに、直刀にはすべてが色褪せて見えた。
新宿の目抜き通りを少し進んだ先に、ピンクの電飾が燦然と輝くキャバレーがあった。ブードゥーの儀式を生で観られるということで売り出している店だ。



(ブードゥーという文字を入力しているときに「?!」と自分でびっくりしました。なう!)
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