雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
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生粋のみつまさクラスタのKさんとイオンで遊んできました!
ちなみに、今月は、三週連続でオフ会です。
oh…。
当然の如くみつまさで盛り上がった末の妄想がコレです。
最初は「政宗ちゃんの執事」というタイトルで妄想していたのですが、なんか、クリスマスネタになりました。
なぜだ?
とりあえず、よくわからないけれど、政宗クラスタなのに、私は石田さんが好きです。
今のところざっと書いた形になるので、後日ちゃんと校正した上で、サイトにも掲載します。
*
*
*
今生で三成が初めて紹介されたとき、政宗は目も当てられないような娘だった。
一応、葬儀という場を弁えてはいるのか、言葉少なだったが、目が雄弁に心の内を語っていた。ろくに会ったこともない親の尻拭いなど死んでも御免だ、という、実に反抗的な眼をしていた。婚約者に向けるにはあまりに不適切な眼差しだった。
空が厚い黒雲で覆われ、みぞれ交じりの強い雨足のせいで視界が不明瞭な、ロマンチックには程遠いクリスマスの出来事だった。
何故、政宗が秀吉の調子として生を受けたのか、三成には解せなかった。前世では秀吉を厭い、豊臣の凋落の原因となった男が、豊臣の後継であるなど、信じ難い事実だ。
だが、肝心の秀吉はまったく頓着しなかった。端から、女などに期待を寄せる男でもない。政宗が男であったならば、幾らか興を覚えたかもしれない。しかし、政宗は女だった。この事実は、秀吉が政宗から興味をなくすには十分すぎた。半兵衛は政宗に皮肉な運命を感じたらしく、言葉の端々からその心中が推察されたが、かつて執着した小十郎を政宗の子守という形で手に入れることで良しとしていたようだった。
政宗は小十郎だけを寄る辺とし、豊臣から顧みられることなく、ただ、生かされてきた。秀吉にとって政宗は子孫を為す道具でしかなく、それも、他に子が生まれるまでの繋ぎのつもりだったと聞く。側近中の側近である半兵衛にしか存在を伝えず、あくまで秘匿した。三成にすら話そうとしなかった。
しかし、秀吉が急逝したことで、事情が変わった。まさか、これほど早く秀吉が落命すると、誰が思っただろう。未来を楽観視し、遺言作成を後回しにしていたことが仇となった。政宗の存在は日の目を見るところとなり、豊臣の後継として、責務を一身に背負う立場になった。
半兵衛はそれが腹立たしいようだった。秀吉の訃報に駆けつけた三成相手に、しきりに愚痴をこぼし、こんなはずではなかったと歯噛みした。そのときようやく政宗の存在を知らされた三成にしても、憤懣やるかたない思いだった。今回は政宗に未来を奪われたわけではないが、またしても伊達に豊臣を奪われたという思いが拭えなかった。
「秀吉の遺志を継ぐのはきみしかいない。あの子じゃ駄目だ。」
半兵衛は苛立ちから噛んでしまった爪に視線を落とし、舌打ちをこぼすと、急ごしらえの書類を三成に押しつけた。婚姻届だった。そこには、未成年の政宗との婚姻を許可する秀吉のサインがあった。それは半年前、政宗が16歳になった日に、酒の席で思い立った秀吉が戯れに半兵衛に作らせた書類だった。秀吉がこのような事態を見越していたとは考えにくい。もし自分の命が長くないと承知していれば、秀吉は正規の手続きで三成を後継に指名していただろう。
しかし、秀吉が亡くなった今となっては、真相は不明だ。
豊臣を守る術はこれしかないと申し渡された三成は、まだ見ぬ政宗と婚姻に応じた。事実上の政略結婚だ。その事実を、三成はまったく意に介さなかった。風来坊のように、愛や恋などと生温い感情を引き合いに出すつもりはない。豊臣のために為さねばならぬことであるならば、三成はただ黙して受け入れるだけだ。第一、愛や恋などと言われたところで、それが何であるのか、三成には解っていなかった。
当初、男として生きた過去が女として歩む邪魔となっているのかと思えばこそ、それも止む終えまい、と思ったが、小十郎によると、政宗に乱世の記憶はないのだという。三成は憤慨した。天下に名だたる秀吉の命を奪っておきながら志を継ぐこともなく、みすみす徳川に天下を奪われ、挙げ句、悔恨の記憶がないなど、三成に言わせれば論外だった。
息巻く三成と小十郎の間で一触即発の空気が流れたが、止めたのは、政宗だった。政宗は三成の噴飯に目を細め、挑戦的に口端を歪めてみせた。
「前世だの今生だの、正直、アンタと小十郎が何を言ってるのかよくわからねえ。だが、アンタが俺に不満だってことだけはわかった。俺だって、今日初めて会ったアンタとの結婚なんざ御免だ。俺が豊臣の名に恥じない後継者になれば、文句はねえんだろ?」
無論、三成にしても、強いて政宗と縁組みしたいわけではない。三成に否やはなかった。
今生でも友として親しんでいる吉継には、政宗の挑発に応じぬよう諭されたが、三成はその助言を聞き入れなかった。仮にも、政宗は現世の秀吉の息女だ。急逝した秀吉に代わり、前世の分も、豊臣の名を継ぐべきだった。語気荒く言い募る三成を、吉継はおかしく思ったようだ。好きにすれば良い。ただ、そう言った。本人以上に三成の心を理解する吉継は、三成が半兵衛の結婚命令を一時的に退け、豊臣の名を汚す危険を犯してまで、政宗に肩入れする理由に薄々勘付いていたらしかった。
存在が甘えになるとして守役を辞退させた小十郎に代わり、三成が政宗の教育係に就くことになった。三成は様々なことを政宗に教えた。それは食事のマナーから、帝王学や経済学、経済界の大物のプロフィールまで多岐にわたった。三成は一流こそ豊臣に相応しいと信じ、政宗にはすべて一流のものを与えた。それまでの政宗の私物を処分させ、庶民では呼吸すらままならない一流の生活に慣れさせた。三成は政宗を一流の女に仕立てあげようと躍起になった。それが自らの責務と信じた。
あれから四年が経った。
「今年のサンタクロースのプレゼントも最悪だな。」
政宗は長い足を組み換え、つまらなさそうに手元の書類を一瞥した。場所は、高層ビルの最上階に設けられた執務室だ。窓の外ではイルミネーションが街に華やぎを与えていたが、生憎の降雨でだいなしだった。
政宗はダイアモンドの原石だった。人知れず育てられた娘は、常人では付いて行くことすら困難な厳しい教育を施されて、驚くほど垢抜けた。もともと整った顔立ちと個性の持ち主だったが、四年経った今では、十人中十人が振り向く美貌とカリスマを具えていた。
「サンタクロースになったつもりなどない。」
「Ah…、それくらい知ってる。」
「ならば何故、そのような不可解なことを言う?」
「アンタもつまらないことで突っかかって来るなよ。面倒臭えな。」
そうこぼして、政宗は書類を机上に投げ出した。それは、三成と政宗の婚姻届だった。この夏、政宗が成人したことで無効となった書類を、三成は政宗に返上することにしたのだ。政宗が後継となることで異論はないと言外に伝える行為でもあった。政宗は立派な後継に育った。特に、この1年余りの成長は目覚ましいものがあった。半兵衛ですら、政宗を後継に認めざるを得なかったほどだ。
「まあ、良い。これでアンタとの関係も清算だ。清々する。」
「好きに言えば良い。だが、これで貴様の責務が終わったわけではない。」
「わかってる。ここがスタート地点だって言いたいんだろ?」
「理解していれば良い。」
高慢に言い放つ部下を政宗はおかしげに眺めてから、顎の下で指を組んだ。
「せっかくプレゼントをもらったんだ。お返しに、俺からもアンタに一つサプライズをやる。」
三成は眉を上げた。政宗の口端には、ここ一年余りでたびたび目にすることとなった人の悪い笑みが浮かんでいた。何か良からぬことを企んでいる証だ。三成は事によっては面罵する気構えでいたが、政宗の台詞に言葉を失った。
「実は、アンタや小十郎のいう記憶が戻った。」
まるで天気を論じるかのように、政宗が事もなげに言ったので、前置きがなければ三成は聞き逃していたことだろう。三成は咄嗟に糾弾しかけた唇を閉ざし、逡巡の後、一つだけ質問を投げかけた。
「…いつだ。」
「去年のクリスマス――切欠が知りたいか?」
政宗の問いかけに、心当たりのある三成は羞恥から瞼を伏せた。
一年前のクリスマス、シャンパンを飲みすぎて酔い潰れた政宗をベッドに運んだとき、唇を盗んだのだ。それをアルコールのせいにするには、三成は生真面目すぎた。また、アルコールのせいにするつもりもなかった。初めて重ねた唇は柔らかく、蜜のように甘かった。三成はベッドに横たえた政宗の頭の隣へ腕をつき、無心でキスをした。覚えたことのない甘い疼きを感じ、初めて、情欲というものの意味を理解した。
だが、婚約者という立場にあるとはいえ、それが契約上のものであることを考慮すれば、あるまじき行為だ。衝動に駆られて唇を重ねた三成は、正気に返るなり、激しく狼狽した。このままここにいてはこれ以上の狼藉に及びかねない。三成は政宗が眠っていることを目視すると、慌ただしく踵を返した。事実上の逃走だった。
あのとき、三成は自分が前世からずっと政宗を欲していた事実に気づかされた。そうして、前世の政宗を思い返しながら、今生の政宗に教育を施していた可能性に思い至った。虚をつかれる衝撃の事実だった。
「それで、アンタはどうしたい?折角のクリスマスだ、アンタの望むように振る舞ってやる。」
政宗が立ち上がり、三成へと歩み寄った。迷い踏み切ることの出来ない相手へ決断を迫るときに用いるように、と、半兵衛が教授したやり方だ。可能性を示唆する問いかけは、可能性がゼロではないことを示していた。
「私と結婚しろ、政宗。遺言によってではなく、義務によってでもなく。」
一縷の希望を胸に重い口を開いた三成へ、その眼前で足を止め、執務机へ腰を下ろした政宗が鼻を鳴らした。
「Ha、ずいぶん強欲だな。まあ、アンタもそれくらい欲を出した方が人間らしくて良いか。」
口以上にものを言う目には、紛れもない茶目っ気が浮かんでいた。くだらない冗談を得意がって言うときに決まって表れる色だった。
「もっとマシなプレゼントを寄越したら考えてやるよ。マイサンタクロース。」
固唾を飲む三成へ右手を差し出し、政宗が挑発した。無分別な挑発だった。三成は政宗の手を取って唇を重ね、首へ回された左腕に引き寄せられるまま、政宗を机上へ押しつけた。ようやく人心地ついて唇を離した頃には、政宗の唇は唾液で濡れ、赤く腫れていた。
「見てみろよ、雪だぜ。今夜はホワイトクリスマスだな。」
仰向けになった政宗が窓の外へ目をやり、嬉しそうに笑う。だが、政宗のブラウスを剥ぐ行為に没頭していた三成は言葉を返さなかった。
「…アンタ、余裕ねえな。」
眉間のしわを深め、ブラウスに大量に取りつけられたボタンを黙々と外しているさまに苦笑すれば、三成が言った。
「何故、貴様が眼前にいる状況で、貴様以外を見なければならない。貴様も私だけを見ろ。異論は認めない。」
三成が馬鹿みたいに真面目に言うので、政宗は言葉を失くしてから、声を出して笑い始めた。しかし、それも、三成によって唇を塞がれるまでの数秒のことだった。政宗は与えられたキスを喜んで受け入れ、三成の背中を掻き抱いた。
クリスマスの夜はまだ始まったばかりだ。
いつしか、政宗の頭からは雪のことなど綺麗に消えていた。
ちなみに、今月は、三週連続でオフ会です。
oh…。
当然の如くみつまさで盛り上がった末の妄想がコレです。
最初は「政宗ちゃんの執事」というタイトルで妄想していたのですが、なんか、クリスマスネタになりました。
なぜだ?
とりあえず、よくわからないけれど、政宗クラスタなのに、私は石田さんが好きです。
今のところざっと書いた形になるので、後日ちゃんと校正した上で、サイトにも掲載します。
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「マイハニーイズサンタクロース」
今生で三成が初めて紹介されたとき、政宗は目も当てられないような娘だった。
一応、葬儀という場を弁えてはいるのか、言葉少なだったが、目が雄弁に心の内を語っていた。ろくに会ったこともない親の尻拭いなど死んでも御免だ、という、実に反抗的な眼をしていた。婚約者に向けるにはあまりに不適切な眼差しだった。
空が厚い黒雲で覆われ、みぞれ交じりの強い雨足のせいで視界が不明瞭な、ロマンチックには程遠いクリスマスの出来事だった。
何故、政宗が秀吉の調子として生を受けたのか、三成には解せなかった。前世では秀吉を厭い、豊臣の凋落の原因となった男が、豊臣の後継であるなど、信じ難い事実だ。
だが、肝心の秀吉はまったく頓着しなかった。端から、女などに期待を寄せる男でもない。政宗が男であったならば、幾らか興を覚えたかもしれない。しかし、政宗は女だった。この事実は、秀吉が政宗から興味をなくすには十分すぎた。半兵衛は政宗に皮肉な運命を感じたらしく、言葉の端々からその心中が推察されたが、かつて執着した小十郎を政宗の子守という形で手に入れることで良しとしていたようだった。
政宗は小十郎だけを寄る辺とし、豊臣から顧みられることなく、ただ、生かされてきた。秀吉にとって政宗は子孫を為す道具でしかなく、それも、他に子が生まれるまでの繋ぎのつもりだったと聞く。側近中の側近である半兵衛にしか存在を伝えず、あくまで秘匿した。三成にすら話そうとしなかった。
しかし、秀吉が急逝したことで、事情が変わった。まさか、これほど早く秀吉が落命すると、誰が思っただろう。未来を楽観視し、遺言作成を後回しにしていたことが仇となった。政宗の存在は日の目を見るところとなり、豊臣の後継として、責務を一身に背負う立場になった。
半兵衛はそれが腹立たしいようだった。秀吉の訃報に駆けつけた三成相手に、しきりに愚痴をこぼし、こんなはずではなかったと歯噛みした。そのときようやく政宗の存在を知らされた三成にしても、憤懣やるかたない思いだった。今回は政宗に未来を奪われたわけではないが、またしても伊達に豊臣を奪われたという思いが拭えなかった。
「秀吉の遺志を継ぐのはきみしかいない。あの子じゃ駄目だ。」
半兵衛は苛立ちから噛んでしまった爪に視線を落とし、舌打ちをこぼすと、急ごしらえの書類を三成に押しつけた。婚姻届だった。そこには、未成年の政宗との婚姻を許可する秀吉のサインがあった。それは半年前、政宗が16歳になった日に、酒の席で思い立った秀吉が戯れに半兵衛に作らせた書類だった。秀吉がこのような事態を見越していたとは考えにくい。もし自分の命が長くないと承知していれば、秀吉は正規の手続きで三成を後継に指名していただろう。
しかし、秀吉が亡くなった今となっては、真相は不明だ。
豊臣を守る術はこれしかないと申し渡された三成は、まだ見ぬ政宗と婚姻に応じた。事実上の政略結婚だ。その事実を、三成はまったく意に介さなかった。風来坊のように、愛や恋などと生温い感情を引き合いに出すつもりはない。豊臣のために為さねばならぬことであるならば、三成はただ黙して受け入れるだけだ。第一、愛や恋などと言われたところで、それが何であるのか、三成には解っていなかった。
当初、男として生きた過去が女として歩む邪魔となっているのかと思えばこそ、それも止む終えまい、と思ったが、小十郎によると、政宗に乱世の記憶はないのだという。三成は憤慨した。天下に名だたる秀吉の命を奪っておきながら志を継ぐこともなく、みすみす徳川に天下を奪われ、挙げ句、悔恨の記憶がないなど、三成に言わせれば論外だった。
息巻く三成と小十郎の間で一触即発の空気が流れたが、止めたのは、政宗だった。政宗は三成の噴飯に目を細め、挑戦的に口端を歪めてみせた。
「前世だの今生だの、正直、アンタと小十郎が何を言ってるのかよくわからねえ。だが、アンタが俺に不満だってことだけはわかった。俺だって、今日初めて会ったアンタとの結婚なんざ御免だ。俺が豊臣の名に恥じない後継者になれば、文句はねえんだろ?」
無論、三成にしても、強いて政宗と縁組みしたいわけではない。三成に否やはなかった。
今生でも友として親しんでいる吉継には、政宗の挑発に応じぬよう諭されたが、三成はその助言を聞き入れなかった。仮にも、政宗は現世の秀吉の息女だ。急逝した秀吉に代わり、前世の分も、豊臣の名を継ぐべきだった。語気荒く言い募る三成を、吉継はおかしく思ったようだ。好きにすれば良い。ただ、そう言った。本人以上に三成の心を理解する吉継は、三成が半兵衛の結婚命令を一時的に退け、豊臣の名を汚す危険を犯してまで、政宗に肩入れする理由に薄々勘付いていたらしかった。
存在が甘えになるとして守役を辞退させた小十郎に代わり、三成が政宗の教育係に就くことになった。三成は様々なことを政宗に教えた。それは食事のマナーから、帝王学や経済学、経済界の大物のプロフィールまで多岐にわたった。三成は一流こそ豊臣に相応しいと信じ、政宗にはすべて一流のものを与えた。それまでの政宗の私物を処分させ、庶民では呼吸すらままならない一流の生活に慣れさせた。三成は政宗を一流の女に仕立てあげようと躍起になった。それが自らの責務と信じた。
あれから四年が経った。
「今年のサンタクロースのプレゼントも最悪だな。」
政宗は長い足を組み換え、つまらなさそうに手元の書類を一瞥した。場所は、高層ビルの最上階に設けられた執務室だ。窓の外ではイルミネーションが街に華やぎを与えていたが、生憎の降雨でだいなしだった。
政宗はダイアモンドの原石だった。人知れず育てられた娘は、常人では付いて行くことすら困難な厳しい教育を施されて、驚くほど垢抜けた。もともと整った顔立ちと個性の持ち主だったが、四年経った今では、十人中十人が振り向く美貌とカリスマを具えていた。
「サンタクロースになったつもりなどない。」
「Ah…、それくらい知ってる。」
「ならば何故、そのような不可解なことを言う?」
「アンタもつまらないことで突っかかって来るなよ。面倒臭えな。」
そうこぼして、政宗は書類を机上に投げ出した。それは、三成と政宗の婚姻届だった。この夏、政宗が成人したことで無効となった書類を、三成は政宗に返上することにしたのだ。政宗が後継となることで異論はないと言外に伝える行為でもあった。政宗は立派な後継に育った。特に、この1年余りの成長は目覚ましいものがあった。半兵衛ですら、政宗を後継に認めざるを得なかったほどだ。
「まあ、良い。これでアンタとの関係も清算だ。清々する。」
「好きに言えば良い。だが、これで貴様の責務が終わったわけではない。」
「わかってる。ここがスタート地点だって言いたいんだろ?」
「理解していれば良い。」
高慢に言い放つ部下を政宗はおかしげに眺めてから、顎の下で指を組んだ。
「せっかくプレゼントをもらったんだ。お返しに、俺からもアンタに一つサプライズをやる。」
三成は眉を上げた。政宗の口端には、ここ一年余りでたびたび目にすることとなった人の悪い笑みが浮かんでいた。何か良からぬことを企んでいる証だ。三成は事によっては面罵する気構えでいたが、政宗の台詞に言葉を失った。
「実は、アンタや小十郎のいう記憶が戻った。」
まるで天気を論じるかのように、政宗が事もなげに言ったので、前置きがなければ三成は聞き逃していたことだろう。三成は咄嗟に糾弾しかけた唇を閉ざし、逡巡の後、一つだけ質問を投げかけた。
「…いつだ。」
「去年のクリスマス――切欠が知りたいか?」
政宗の問いかけに、心当たりのある三成は羞恥から瞼を伏せた。
一年前のクリスマス、シャンパンを飲みすぎて酔い潰れた政宗をベッドに運んだとき、唇を盗んだのだ。それをアルコールのせいにするには、三成は生真面目すぎた。また、アルコールのせいにするつもりもなかった。初めて重ねた唇は柔らかく、蜜のように甘かった。三成はベッドに横たえた政宗の頭の隣へ腕をつき、無心でキスをした。覚えたことのない甘い疼きを感じ、初めて、情欲というものの意味を理解した。
だが、婚約者という立場にあるとはいえ、それが契約上のものであることを考慮すれば、あるまじき行為だ。衝動に駆られて唇を重ねた三成は、正気に返るなり、激しく狼狽した。このままここにいてはこれ以上の狼藉に及びかねない。三成は政宗が眠っていることを目視すると、慌ただしく踵を返した。事実上の逃走だった。
あのとき、三成は自分が前世からずっと政宗を欲していた事実に気づかされた。そうして、前世の政宗を思い返しながら、今生の政宗に教育を施していた可能性に思い至った。虚をつかれる衝撃の事実だった。
「それで、アンタはどうしたい?折角のクリスマスだ、アンタの望むように振る舞ってやる。」
政宗が立ち上がり、三成へと歩み寄った。迷い踏み切ることの出来ない相手へ決断を迫るときに用いるように、と、半兵衛が教授したやり方だ。可能性を示唆する問いかけは、可能性がゼロではないことを示していた。
「私と結婚しろ、政宗。遺言によってではなく、義務によってでもなく。」
一縷の希望を胸に重い口を開いた三成へ、その眼前で足を止め、執務机へ腰を下ろした政宗が鼻を鳴らした。
「Ha、ずいぶん強欲だな。まあ、アンタもそれくらい欲を出した方が人間らしくて良いか。」
口以上にものを言う目には、紛れもない茶目っ気が浮かんでいた。くだらない冗談を得意がって言うときに決まって表れる色だった。
「もっとマシなプレゼントを寄越したら考えてやるよ。マイサンタクロース。」
固唾を飲む三成へ右手を差し出し、政宗が挑発した。無分別な挑発だった。三成は政宗の手を取って唇を重ね、首へ回された左腕に引き寄せられるまま、政宗を机上へ押しつけた。ようやく人心地ついて唇を離した頃には、政宗の唇は唾液で濡れ、赤く腫れていた。
「見てみろよ、雪だぜ。今夜はホワイトクリスマスだな。」
仰向けになった政宗が窓の外へ目をやり、嬉しそうに笑う。だが、政宗のブラウスを剥ぐ行為に没頭していた三成は言葉を返さなかった。
「…アンタ、余裕ねえな。」
眉間のしわを深め、ブラウスに大量に取りつけられたボタンを黙々と外しているさまに苦笑すれば、三成が言った。
「何故、貴様が眼前にいる状況で、貴様以外を見なければならない。貴様も私だけを見ろ。異論は認めない。」
三成が馬鹿みたいに真面目に言うので、政宗は言葉を失くしてから、声を出して笑い始めた。しかし、それも、三成によって唇を塞がれるまでの数秒のことだった。政宗は与えられたキスを喜んで受け入れ、三成の背中を掻き抱いた。
クリスマスの夜はまだ始まったばかりだ。
いつしか、政宗の頭からは雪のことなど綺麗に消えていた。
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