忍者ブログ
雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

やりとりが急に浮かんだので、カノミロです。


拍手





「ミロ、結婚しよう。」
「どうしたやぶから棒に。」
突如天蠍宮内に響き渡った声に、ちょっとそっとでは消えそうにない書類の山と向き合っていたミロは、嘆息まじりに大きく伸びをした。
ちらりと時計に目を向ければ、時計の短針は2と3の間を指し示している。アフロディーテに誘われたお茶の時間には早いが、そろそろ仕事にキリをつけても良い頃合いかもしれない。
「俺も休憩するとしよう。さすがに疲れた。」
そう言えば、眼前の男はミロの肩を掴んだ。
「それで、いつアテナにご報告する?」
「?アテナに何をご報告するのだ?」
「むろん、俺とお前の婚姻だ。」
ミロは首を捻った。
眼前の男――双子座の黄金聖闘士カノンはまさかミロに求婚を断られるとは思ってもみないらしく、しごく自信に満ちあふれた表情をしているが、ミロはどうしても受諾する気になれなかった。そもそもそれ以前に、どうすればこの求婚を真剣に受け止められるというのだ。
ミロは眉根を寄せて、カノンの手を退けさせた。
「お前は異なことを言う。お前と俺は知り合って間もないではないか。だいたい、聖戦からようやく1ヶ月経ったところだぞ。まだ日常を取り戻してもいないうちから、みなの手本たる黄金聖闘士が、そのような浮ついた真似が出来るか。」
生来の生真面目さから律儀に返答してみせるミロに、カノンが偉そうにふんぞり返った。
前々から思っていたのだが、この男、いちいち偉そうだ。他人のことを言えた義理ではないものの、内心、ミロは顔をしかめた。
「男っ気のないお前に悦びを教えてやるのは俺が適任だろう。」
言葉の意味を指し示すかのように、カノンの手がミロの手の甲を撫ぜ、びっくりしたミロは慌ててカノンの手を振り払った。
触れられた場所が熱を孕んだように熱い。カノン相手だと、いつもそうだ。
ミロは触れられた手を擦りながら、カノンを睨みつけた。
「お前…疲れているんじゃないのか?休暇を頂戴して、半月ばかりバカンスにでも洒落こんできたらどうだ。」
「ミロは気が早いな。もう新婚旅行の相談か。その前に、アテナに結婚の事実をご報告しなければならないだろう。」
話が噛み合わない。アイオリアや氷河相手のときも話が噛み合わないことは多々あるが、これほど噛み合わないのはレアケースなのではないだろうか。
ミロは黙って、窓の外へ視線を向けた。天蠍宮の執務室の窓から見える外の様子は朗らかで、いかにもシェスタに最適そうだ。
現実逃避に昼寝に移行してしまうのも良いかもしれない。幸い、長年の修行の賜物で、聞いている風なポーズをとりながら眠る自信はあった。
しかし、ここで寝ようものなら何をされることやら。
ミロは大きく溜め息をこぼすと、カノンを見つめた。この男、サガの弟だけあって眉目秀麗で文武に優れ、トータルバランスも良く、スペックだけを比較すれば聖域で追随を許さないほどハイスペックなのだが、長年の孤独がそうさせるのか、どうにも、残念な部分が目立った。
「SNを打ちこまれたあの日から、お前のことが頭から離れない。この1ヶ月、ずっと思い悩んでみたが、お前のことを諦められそうにない。だから俺と結婚してくれ。幸せにする。いや、幸せになる。俺と結婚することで俺を幸せにしてくれ。後悔はさせない。」
熱に浮かされたようにカノンが語る。
ふと気付けば、背もたれへ右ひじを置いて距離を詰めたカノンの体重が、執務椅子へかけられていた。
カノンへのしかかられる格好になったミロは、咄嗟に周囲へ視線を走らせた。この閉ざされた腕の檻からどうすれば逃げられるものか。眼前の男がどういう意味でどれくらい本気なのか定かではないが、黄金聖闘士が白昼堂々襲われるなど笑い話にもならない。
「カノン、」
やんわり名を呼ぶミロに、カノンがにっこり笑いかけた。サガによく似た笑みながら、どこか肉食獣の獰猛さと無慈悲さを感じさせる、底冷えのする笑みだった。
どうも、カノンはあくまで本気らしい、とミロが悟ったのはこの瞬間だった。
「何だ?イエス以外聞くつもりはないぞ。」
腕に力がこめられ、背もたれに負荷のかけられた椅子がぎしりと嫌な音を立てた。ミロはにっこり笑い返しながら、自ら、カノンの唇に唇を近づけた。
「吊り橋効果という心理的効果を知っているか?」
わずかにカノンの顔が傾けられ、熱い吐息が唇をかすめた。背もたれにつかれていたはずのカノンの手が、ぎこちない優しさでミロの頬に添えられ、すんなりした白い指先が耳たぶを擦る。はじめて覚える感覚に、ふるりと、ミロの身体が震えた。
「ミロ…、」
今にも唇が重なろうとしたそのとき、ミロはカノンに思いっきり頭突きを喰らわせた。
民間人や青銅聖闘士相手ならばまだしも、黄金聖闘士を怯ませるほどの頭突きだ。もちろん、ミロも無事では済まなかった。だが、ヘッドパーツを着用していない分、カノンの方がダメージは大きいはずだという確信があった。ミロはカノンがよろめいた瞬間を見逃さず、執務室から飛び出した。
「黄金聖闘士を舐めるな!」
心臓がばくばく言っている。直接触れられたわけでもないのに、触れられた場所同様熱を孕んで痛いくらいだ。ミロは必死で足を動かしながら、アフロディーテの待つ双魚宮へ向かった。
これはあくまで吊り橋効果に過ぎないと自分自身に言い聞かせながら。


PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
たっぴ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者ブログ [PR]