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その日、双児宮のプライベートルームのリビングでは珍しい光景が繰り広げられていた。
ソファに陣取ったミロは、組んだ足の上へサッカー雑誌を広げ、カノンが向いてくれたりんごを口へ運びながら、ちらりと、向かいで熱心に子猫の蚤取りをしているサガを盗み見た。
サガの膝に載せられた子猫は、別に、双児宮で飼われているわけではない。果敢にも、聖域にどこぞから迷い込んだ野良猫である。結界まで張り巡らせ、水も漏らさぬ警備を誇るはずの聖域にこの子猫が入り込んだので、敬語の任に就く下級兵や青銅聖闘士たちがシオンにこってり絞られたことを、ミロはカノンから寝物語に聞かされていた。任務に出払っていたミロは、幸か不幸か、事件当日聖域に居合わせなかったのだ。
この数十分間、子猫は時折伸ばされる指先に甘噛みしたり、舌を這わせたりして驚かせはするものの、ほとんど為されるがままになっている。よほどサガが気に入っているのだろう。サガもこの数日で子猫のことをずいぶん気に入ったらしく、このまま引き取るつもりではないか、とカノンがこぼしていた。サガは片手間に猫可愛がるだけで、実際、世話をしているのはカノンになるので、少し不満なのだろう。
サガがワーカホリックであることは周知の事実だが、その一方で、仕事を抜かせば、サガに趣味らしき趣味がないことを知るものは少ない、とミロは思う。アテナ含め周囲は、サガが悔恨の念に囚われて贖罪の思いから仕事をこなしているものと誤解し、熱心に休暇を取るよう勧めるが、勧められたところで、サガにはしたいこともなければ、すべきこともないのだ。ミロ自身、カノンと親密な間柄になり、こうして双児宮に入り浸るようになってから気づいた事実だった。
もっとも、鍛錬以外に趣味を持たない聖闘士など珍しくもなんともないし、黄金聖闘士同士の関わりは非常に希薄なものだ。ミロは人懐こい性格と、聖域に常任しているという身分から、他の者たちともわりかし親交があるだけで、黄金聖闘士はよほどのことがない限り互いに関わりを持っていなかった。しがらみが生まれれば、死別が辛くなるだけだ。だが、聖戦という死地にあって平静で居られない黄金聖闘士など何の役にも立たない。生きてきた価値もない。聖闘士として役に立てないくらいならば、今生での生温い友好など犬にでも食わせてしまった方が良い。と、シャカのように極論を言うつもりはないが、ミロもその意見にはおおむね同意している。シオンに言わせれば、サガの乱以前は違ったらしいが、現在の黄金聖闘士の大半はそれ以前を知らないのだから、知る由もない。
カノンと懇ろになるまで、ミロ自身、趣味らしい趣味など持たなかったので、サガが暇を持て余すこともなく、聖域のためになるのであれば、適当に仕事を与えておくのも一つの手ではないかと思っている。誰もがカノンのように多趣味なわけではないし、ムウやアフロディーテのように趣味を極めて技に流用出来てしまうわけではない。聖域ではことさらアテナ信仰が強いため、一種の偶像崇拝であるアイドルやアーティストにはまる行為は嫌悪されているし、自分たちが強すぎることもあって外界のスポーツには興味を持ちにくい。もともと頭より身体に栄養が偏っている輩が多いこともあり、園芸や読書に興味を持つものなど、皆無に等しかった。
どちらかと言えば頭より身体に栄養の回った方であるミロも、親友のカミュのように教育や研究に心血を注げる性質ではない。闘技場でアイオリアと喧々諤々馬鹿騒ぎをしながら、組み手でもしている方が性に合っている。ミロはいろいろなしがらみから解放されて、酸欠で頭が空っぽになる瞬間が一番好きなので、幼少の頃から上手い下手に限らず、身体を動かす類は何でもやった。アルデバランと小宇宙なしの変則モンゴル相撲もやったし、若気の至りで、アイオリアと命綱なしのバンジージャンプをやってムウにサイコキネシスで助けられ無茶苦茶怒られたりもした。ちなみに、最近のお気に入りでミロの唯一の趣味と言える趣味らしいものは、セックスで、カノンと丸一日双児宮の寝室にしけこんでいることも間々あるため、同僚たちから白い目で見られている。当然、どのくらいの長さにわたってどれくらいカノンとセックスしていたかなど、ミロとしてもいちいち喧伝しているわけではないのだが、どういうわけか黄金聖闘士連中にはばれていて、最近は不本意にも、「それのせいでサガは双児宮にほとんど居らず、教皇宮で仕事に奔走しているのではないか。」とムウに呆れ交じりに忠告されていた。
つづけたい(願望)
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