雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
良い女になった。
一緒にバスタブに浸かり不埒なちょっかいを出しながら、カノンは思う。ミロ子は実に良い女になった。最初はただ、あのサガが任命した黄金聖闘士さまということもあって壊れそうなくらい辱めてやるだけのつもりだったが、うっかり情が移ってこのざまだ。
これまで女をはべらせてこなかったわけではない。美貌と財力をひけらかすカノンには、常に女が群がっていた。カノンは自分の好きな女を選べば良かった。肉感的で頭が足りない長髪の女が望ましかった。別れるとき楽だからだ。それに、海闘士として余計な情報を取られないで済む。
さかしい女は嫌いだった。乳房の小さい女も駄目だ。乳房も尻もでかい女が良かった。
それがどうしたことか、理想とは真逆の小娘に手玉に取られている。
頭の回転が速く、文武に優れ、忠誠心に篤い敵が他の女と逢瀬を重ねるなど、百害あって一利ない。だが、口には出さないモノの、カノンはあくまでもミロ子が良かった。ミロ子を腕に抱きしめまどろんでいるとき、ミロ子が望むのならば、世界征服の夢を諦めても良いとすら思えることがあった。
関係を持って、もう12年になる。ミロ子も26歳、そろそろ結婚を視野に入れる年だろう。これだけ良い女だ、カノンの知らない隙に他の男からアプローチを受けていることもあるかもしれない。
もっとも、ミロ子はカノンでなくては満足できないだろうが。
カノンはミロ子の身体を反転させると、反り返り始めていた己のものへゆっくり腰をおろさせていった。あえかな息を吐くミロ子の唇を自分の唇で塞ぐ。
いずれ聖域は滅ぼすつもりだった。自分を拒絶した場所など、この世になくて良い。存在を否定されたおかえしに、存在を消去してやる。聖域さえなくなれば、寄る辺を失くしたミロ子は必然的にカノンのを頼ってやってくるだろう。
ミロ子を自分だけのものにしたい、聖域などと共有したくない。
あとは、あの偽教皇さえ死ねば――サガさえいなければ、何とでも誤魔化せるのに。
そんなおり、ミロ28歳、カノン36歳のときに、サガの乱がおきる。ミロ子が生還したことをカノンは心から喜ぶが、教皇の正体がばれたことを危惧してもいる。
ミロ子はサガの素顔を見たのだろうか。
一覧性の双子であるカノンとサガは、当然のことながら、瓜二つだ。一目でも見られれば、すべてが明るみに出てしまう。
サガの乱の残務処理で忙しいはずだが、ミロ子はカノンの連絡にすぐさま応じた。いつもは年上のカノンに合わせようと念入りにめかしこんでくるミロ子は、このときばかりはさすがに、余裕がなかったのか、ナチュラルメイクにシャツとパンツスタイルだった。
時間を惜しむようにホテルへ入る。先に口火を切ったのは、ミロ子だった。
「カノンはサガの兄弟なのか?」
「…そうだ。」
ミロ子に真正面から見つめられたカノンは、ミロ子が求めるまま、これまでの半生を語る。存在を秘匿されスペアとして生かされてきたこと、サガに殺されかけスニオンへ閉じ込められたこと、運よく脱出は成功したものの地上に降りる際テレポートに失敗し海へ落ちたこと、そのさい、ポセイドンの眠る場所へ辿り着き、海龍としての力を得たこと。
「俺は、サガを殺し、俺の存在を否定した聖域を滅ぼし、そのうえで、ポセイドンの力を利用して世界を征服するつもりだった。」
カノンの発言に、ミロ子が目を見開く。黄金聖闘士として、そのような真似見過ごすわけにはいかない。
「だが、ミロ。お前が俺のために黄金聖闘士を辞し、聖域を出て、俺の女として共に過ごしてくれるというのならば、俺も野望を諦めて、ただの男として生きることを誓おう。だから、ただの男女として、ただの夫婦として俺と共に生きてくれ。」
そうこいねがうカノンの台詞がミロ子には眩しくとても嬉しい。しかし、逡巡の後、ミロ子は頭を振る。
「私は蠍座の黄金聖闘士だ。黄金聖闘士であることは、私にとって、職務ではなく生きざまだ。だから、お前の望みは叶えられない。たとえ、私はお前と手に手を取って聖域から逃げたところで、旅先で困っている民を見たら、助けてしまうと思う。世界が危機に瀕すれば、黄金聖闘士として飛んでいくことだろう。」
カノンの望むとおり、ただの女であることが出来たら。好いた男とふたりで生きるだけで満足できていれば。
だが、ミロ子にはとうてい叶えられそうになった。ミロ子は女である以前に黄金聖闘士なのだ。それはどうあがいても変えられない事実だ。
すまないと泣きじゃくるミロ子の肩をカノンは抱きしめ、背中をさすってやる。そうしてベッドにゆっくり体を横たえ、余すところなく、ミロ子の体へキスを落としていく。ミロ子はこれが最後だと理解すればこそ、カノンにすがりつき、今まで口に出せなかった愛の言葉を囁く。
事後、泣き疲れて眠るミロ子の髪を梳いていたカノンは、ミロ子の耳の後ろへ唇を押しつけると、幻朧魔皇拳を放つ。
これでミロ子の記憶は書きかえられ、自分との出逢いも情事も別れもなかったことになる。カノンとの過去が消失したことでミロ子の記憶は大幅に削られるだろうが、その消失した部分を埋め矛盾を解消するべく、自発的に改竄が行われるはずだ。
カノンは最後にミロ子にキスをすると、ホテルを後にする。
ミロ子がカノンの誘いに応じなかったのは、居場所があるからだ。ならば、その居場所を奪えば良い。無残な形であればあるほど、ミロ子は当初の頃のようにカノンを憎悪し、傍を離れがたくなるだろう。最初は嫌々ながらの性行為でも良い。それが最終的に本物の愛情に変わることを、今のカノンは知っている。
聖域を滅ぼし、聖闘士を皆殺しにし、世界征服を果たした暁には、ミロ子も自分のものになろうだろう。
だからそれまで、ミロ子とはしばしの別れだ。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
フリーエリア
最新コメント
最新記事
(01/12)
(01/12)
(01/11)
(12/07)
(11/09)
プロフィール
HN:
たっぴ
性別:
非公開
ブログ内検索
P R