雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
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相変わらず、カノンに呼び出されて抱かれる日々は続いている。ただ、あの日以降、ミロ子とカノンの関係は何かが決定的に変わってしまった。
変わらず性行為を強要してくるとはいえ、カノンは以前ほどミロ子に無理強いをしなくなった。まるで、あの一件が切欠で、ミロ子は「弱者たる子供」ではなく「庇護されるべき子供」だと気付いたとでもいうかのように。挿入もそれまでのように乱暴なものではなく、ミロ子が痛がらないで済むように配慮された。舌や指を使って入念にほぐされると、気恥ずかしさから濡れてしまうこともあった。カノンはそれを「男を知って淫乱になった」と言って笑ったが、屈辱を与えるための侮蔑というよりも、ミロ子が痛い思いをせずに済むようになって満足しているようだった。
カノンの愛撫に身体が蕩ける。
もともとカノンは性行為が上手なのだろう。あえてその手腕を見せず己だけの快感を追求したのは、ミロ子が辱め苦痛を与えるべき対象だったからだ。
それとも、妊娠を妨げるためといって渡されたピルに、淫乱になる成分でも含まれているのだろうか。
自分から楽しむことはないものの快感を知ってあらがえなくなったミロ子に、カノンはさまざまなことを教え込んだ。カノンは明らかに、快感にあらがえず自分色に染まる黄金聖闘士の子供を面白がっていた。ミロはそれを十分承知していたが、それまでさんざんなぶられていたこともあり、カノンの優しさにあらがえなかった。偽善で欺瞞に違いないと思いながらも、痛みを与えることのない手の優しさに心が震えた。
生理のあと、次第に女めいてきた身体は、以前より感じるようになったのかもしれない。
わからない。
わかることは、カノンの手がもはや暴力を振るわないことだけだ。
カノンを殺したい気持ちは急速に萎えて行った。依然として脅迫は続いていた。だが、それが中身を伴わない表面上の脅迫であることを、ミロ子もカノンもうすうす気づいていた。
日程が合わなければ、カノンは妥協してくれた。半年前ならば考えられない展開だった。ベッドに入る前に、二人でテイクアウトの食事をすることもあった。互いの利害の及ばない、どうでも良いような話をすることすらあった。酒が入っていた方が理性を無くせるならば、と酒を勧められても断らなかった。ひどく乱れて求めても、ただ笑うだけで、馬鹿にはされなかった。
いつしか、外食を取るようになった。ショッピングに赴くこともあった。
ミロ子は18歳になっていた。8歳年上のカノンと、出先で恋人に間違えられても否定しなくなった。否定できなくなった、が正しい。
カノンに見あう大人の女性になりたくて、ミロ子は一人称を「オレ」から「私」に変えた。洗練された女性になりたかった。化粧も学んだ。最初は、色つきのリップクリーム。闘いだけが身上の黄金聖闘士に不要だと思って切り捨ててきた女の部分を、ミロ子ははじめて拾い上げた気がした。要領がわからず不恰好で派手派手しくなる一方だった化粧をカノンは笑い、ブティックと美容室に連れて行ってくれた。鏡に映るワンピース姿の少女は、完全に恋するものの目をしていた。ざんばらだったはずの髪はきれいに切りそろえられていた。ベリーショートは、いつの間にかボブになるまで伸びていた。
いつでも連絡が取れるようにと携帯電話を贈られた。はじめての贈り物に舞いあがりそうなほど嬉しくなった。
その夜、カノンはいつも以上にミロ子を優しく丁寧に抱いた。
「なぜ、服を贈ったと思う?」
「…なぜ…?」
「脱がせるために決まっているだろう。」
スカートの中に頭を入れたカノンが、歯を使ってガーターベルトを外していく。足に押しつけられた固い熱源に、期待から胸が高鳴った。あえてブラジャーは外さないまま、乳房をねぶられる。カノンのものを擦りつけられる。ねちっこさすら感じるほどの念入りな愛撫に、ミロ子はあられもなくよがりすがりついてしまった。
耳を撫でられ唇を押しつけられても、胎にクるだけで、嫌悪は抱かなかった。髪を梳かれても、安楽を覚えて目を閉じるだけで、恐怖は覚えなかった。
さんざん焦らされて我慢できなくなったミロ子が跨ると、カノンは嬉しそうに腰に手を添えて、律動を助けてくれた。
心地よい疲労から重い身体を持て余し眠りに引きずり込まれながら、抱き締めてくるカノンの腕の中で安らぎを覚えた。
やっかいな事態だった。
「ミロ、お前、男でもできたのか?」
その言葉にミロ子ははっとしてシュラを振り返る。宮が近いこともあって親交を深めるシュラは、おそらく、カミュが弟子を育てるべくシベリアに行ってしまってからは、誰よりも近くでミロ子を見てきた。
視線でなぜそう判断したのか答えを促すミロ子に、シュラが肩を竦めてみせる。
「外出した後、いつもシャンプーの匂いさせてりゃ、いくら鈍感だって気づくに決まってる。やけに入れ込んでるじゃねえか。相手は一般人か?」
一般人、ではない。ミロ子以上の実力を有し、聖域で秘められた場所を知る男だ。一般人であるはずがない。だが、何ものかと問われると、それもわからない。
敵なのだと思う。
「…秘密だ。」
言葉を濁すミロ子にシュラが顔をしかめる。
「お前、けちだな。」
「何とでも言え。」
あからさまな子供っぽい表情と発言に、ミロ子は安堵した。これが、ムウやシャカであったら騙しとおせる自信がなかった。目敏い彼らは、もしかしたらすでに気づきつつも、あえて口をつぐんでいるだけなのかもしれない。
天蠍宮に帰ったミロ子は鞄から、贈られたワンピースと携帯電話を取り出し、嬉しそうに微笑む。そして、親友のことを思う。
おそらく、カミュは気づかないに違いない。ミロ子の実力を信じ、ミロ子を異性としてではなく同士として見るからこそ、カミュはミロ子が「女」になった可能性に思い至らない。
そんなカミュに憧れていたときもあったのだ。
カノンの子が欲しい。強い男の、好いた男の子を産みたい。
カノンを愛している。
ミロ子はピルを飲むのを躊躇する。だが、産んだところでどうする。近く聖戦を控えた黄金聖闘士が我がことにかまけるなど、前代未聞の醜聞になるに違いない。それに、カノンの信頼を裏切ることになる。
ミロ子はピルをてのひらにあけると、水で流しこむ。
次に会えるのは四日後。すでにカノンが恋しかった。
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