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天蠍宮のだだっぴろいベッドの上で、ミロは悩んでいた。そう思い悩むようなことではなく、うっかりどうでも良いようなことに気づいてしまったがために、誰にも相談できず一人さびしく悩む羽目に陥っていた。
最近、カノンがやさしいのだ。
今も、ミロはカノンの腕の中で、厚い胸板を前に悶々としている状況である。
むろん、ミロとて、カノンに冷たくされたいわけではない。どちらかといえば、当然の人間心理として、やっぱり好きな人にはやさしくしてもらいたい。ただ、セックスのときは、少しくらい乱暴に扱われた方がミロ的にはうれしかったのである。
近頃のカノンは、ミロの指に指を絡め、ぎゅっと手を握りしめながら、一緒にイくのをことのほか気に入っていた。近頃、というか、気づいたときにはそうだった。入籍した当初はまだたしょう乱暴で、後ろから突かれるのが常だったので、おそらく一カ月に満たないのだが。
いつから、カノンはミロの表情を微に入り細に入り観察するような男になったのだろう。
セックスの最中、けぶるような愛情と欲望に満ちた熱っぽい眼差しを向けられて、ただですむものなどいないに違いない。実際、ミロは、そんな目で見つめられると、嬉しさよりどうにも気恥ずかしさが勝って、きゅんきゅん感じまくってしまうのだ。ただでさえ、カノンの顔にはとてつもなく弱いというのに。
しかも、カノンの台詞が、また輪をかけてひどいのである。少し前のカノンだったら、そういう風に感じてしまうミロの様子を、実に楽しそうに、ひどい言葉で揶揄し、なじり、責め、なぶったはずである。それはそれで、それが本意ではないとわかっているミロにとっては楽しかったし、気持ち良かった。最高、とまでは言わないが、ベターではあった。
それが、最近のカノンと来たら、ミロの中が絡みついてそんなに俺が好きなんだな、とか、俺も好きだ、とか、ミロの名前を連呼してみたりとか、ともかく、別の意味でミロが首まで赤くしてしまうような言葉しか吐かないのである。直球すぎる愛情表現に、これまたやっぱり、ミロはぐずぐずに溶けてしまうのだ。
虐げられたいわけではない。
やっぱり、優しくしてもらいたいという気持ちはある。
だが、こんな、こんな…。
「ううう、恥ずかしくて死んでしまう!」
突然よくわからないことを叫ぶなり、ベッドでのたうちまわるミロをカノンが不思議そうに見やる。その眼が見当違いな理解を示して愛情たっぷりの光を宿し、カノンによって楽しそうに身体をひっくり返されるまで、わずか10秒。
朝っぱらから、天蠍宮に賑々しい喘ぎ声が響いた。
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