忍者ブログ
雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

習作です。
たまにはカノミロ以外を妄想シマス。



拍手




長い間、シャカは思い悩んでいた。
アフロディーテは実力主義だからこそ、サガに心酔していた。デスマスクやシュラも、そうだ。
ミロとアイオリアは、実力主義ではない。実力はあって当然と信じる、単なる武闘派だ。自分の実力と正義を疑ってもみない二人だからこそ、そのように武力を行使することを恐れないのだろう。
武だけがすべてではない。だが、正義など、立場の違いでくるりくるりと万華鏡のように姿を変えてしまう。
この美しくもけがらわしい世界で、唯一無二のものは、一体何なのか。
信じるに値するものは、何なのか。
アフロディーテたちがサガを妄信し、ミロたちがアテナを盲信するように、信じ切れるものがシャカにはなかった。むろん、シャカはアテナを信じ、愛している。だが、他のもののように盲いていないだけだ。シャカはアテナがひとりの少女にすぎないことも、また、承知していた。
悟りを開き、エイトセンシズに目覚めればあるいは、と修行を重ねてみたが、辿り着いた先は「答え」ではなく、新たなる「問いかけ」の始まりだった。
ブラフマン、ヴィシュヌ、シヴァ。
破壊と創造の果てに、流転する世界。
天地を行きかい巡りゆく魂と、太陽に蓄積されゆく情報。
アテナによって再び生を受けたこの魂も、いつかは、冥府を巡り太陽へ蓄積されるのだろうか。


「ふむ…信教の関係で、太陽に行くことはないかもしれん。」
「は?何がだ?」
前の席につき、カレーを頬張っているミロが問いかけてくる。シャカはせめて咀嚼を中断するよう求めようかどうか悩んだが、このおろかものには何を言っても無駄だと見当をつけ、溜め息をつくに留めた。
そもそも、それほど好きではないと言っているにもかかわらず、週一でジャパン風カレーをおすそ分けしにやってきて勝手に夕餉の支度をするおろかものに、何を言えるのだ。
シャカはスプーンにカレーをすくい、一口頬張る。
今日も、カレーの具は野菜にトウフだ。ベジタリアンであるシャカへの配慮なのだろうが、わざわざ肉に似せたトウフを入れなくとも、他にいくらでも何とかする方法はあっただろう。
インド出身だからといってカレーが好きなわけではないし、ベジタリアンではあるが肉もどきが食べたいわけでもない。
固く閉ざしていた目をこっそり開けて、茶を飲んでいるミロを盗み見る。ミロがギリシャの酒ウゾを愛していることは知っている。それでも、ここでは決して呑もうとしないのは、禁酒を厳守しているシャカに合わせてのことだろう。
ちらり、と青い目がシャカの目を射抜く。どきりと鼓動が跳ねた。
なぜ、ミロごときに。
いかんいかんと逸る心臓を抑えつけ、ふいと顔を逸らすと、得意げな笑声が耳に届いた。
「お前は時折、俺を盗み見ているだろう。ふふん、知っているのだぞ。かわいいやつめ。」
ミロのふらちな指先が、シャカの顎をくすぐる。
シャカが自らに色欲にふけることも禁じていることは、ミロも重々承知している。それを、シャカは少しだけ残念に思った。信仰を守る上で、そう思う理由など何一つないはずにもかかわらず、そう思ってしまう自分にシャカは少しだけ動揺した。
温かな指先は、ふにふにとシャカの頬を突くと、名残惜しそうに離れた。
再び、少しだけ目を開けて、ミロの顔を見つめる。淡い電灯の光に、ミロの金髪が煌めいた。そのこんじきは、あれほど焦がれる太陽に似ていた。薔薇色の頬はしあわせに満ちており、ふっくらした唇は笑みを湛えている。心から、うつくしい光景だと思った。
小宇宙を貯める作業は、また最初からだ。二度目の溜め息をこぼす。
聖戦後、どういうわけか、シャカはこの愚行を繰り返していた。哲学的思索に占められていたはずの心は、今やどういうわけか、ふわふわ形作られた金色の蠍で占拠されつつあった。それに、どういうわけか、根拠もなしに、ミロならば信じてやっても良いと思えた。
にっこり、眼前のミロが笑顔を向けてくる。シャカは再び固く瞼をつむった。
固く目をつぶるシャカは、よもや自分の頬が赤らんでいるなど、知る由もない。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
たっぴ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者ブログ [PR]