雑記および拍手にてコメントいただいた方へのご返信用です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
カノンとソウイウコトもする関係になってから、一か月が過ぎた。
長期休暇を取るつもりが、居心地のいい現状に居座って、だらだら過ごしている自分を自覚して、ミロは苦笑する。隣ではカノンが、無意識にミロの髪を撫で梳きながら、テレビに夢中になっている。
カノンはビールを飲んでいるが、妊婦のミロは飲むわけにもいかず、あいまいにぼかしてりんごジュースを飲んでいる。女になって味覚が変わったのだとうそぶけば、カノンは意外なほどあっさりと嘘を信じ込んだ。
まるきりの嘘というわけではないが、慣れない嘘に良心が痛む。
はやく真相を伝えなければ。そのうち、腹は隠しきれないくらい大きくなるだろう。嘘がばれる前に、自分から話を切りだすか、そうでなければ、逃げ出したかった。
「そういえば、お前、生理は大丈夫か?」
急なカノンの話に、反応が遅れた。ミロはきょとんと丸くする。それで、カノンは得心がいったらしく、ほっと胸を撫で下ろした。
ミロと双方合意の上でちゃんと抱き合った夜以来、カノンはコンドームをつけるようにしている。だが、最初のとき、カノンは避妊をしなかった。ミロだって、最初から男に戻るつもりだったのだから、まさかピルを飲んでいるわけもないだろう。
だが、生理が来ていないのであれば…まだ、変質したミロの身体が妊娠に対応していないのであれば、妊娠の可能性もないだろう。
これほど強く焦がれるミロとの間に、子を為せたら、次代の黄金聖闘士を為せたら、どのように感じるだろうと思うこともあるが、そう考えてしまうことは、ミロへの背任行為のような気がした。ミロは、女でいたくて女でいるわけではない。戻れず、否応なしに、女でいるだけなのだ。決して、カノンの子が産みたくて、女でいるわけでは…。
無意識のうちに、ミロの頭を胸元へ引き寄せていたらしい。わずかにカノンの膝の上へ身体を乗り上げたミロが、首筋へ噛みついて、舌を這わせている。この蠍は、猫のようにきまぐれでしたたかだ。カノンは更にミロの身体を抱き寄せると、シャツのすそへ腕を差し込みながら、ミロにキスした。最初は、じゃれあうように、唇をはみあうだけのキス。それから、舌を差し込んで、しだいに高ぶりあう身体を持て余し、乱暴に、けれど、壊れモノを扱うようになでさすりながら、たがいの欲望をぶつけ合うキス。
ミロの舌が、カノンのものをなぶる。ミロはカノンのものを愛撫するのが好きだ。もともと、男だから、どこをどのようにすれば良いかなど知り尽くしている。カノンはやがてそれがはちきれんばかりになると、ミロの脇の下に腕を差し込んで、ミロの身体を腹の上へ引っ張り上げた。
興奮から、ミロのしとどに濡れている場所へそれをすりつける。
このまま入れたい。
だが、カノンは欲望をねじふせると、溜め息をこぼして、立ち上がった。さすがに、リビングにコンドームは置いていない。寝室まで行けば、腐るほどあるが、今は、財布の中に隠してある分でどうにか事足りるだろう。
中途半端に投げ出されたミロがふくれっつらをしている。カノンは苦笑いをこぼした。
「そうはいっても、避妊は大事だろう?」
小さく、ミロがつぶやく。聞こえないくらいの声で。
「今更だと思うがな。」
ぎりぎりまで高まった性欲のせいで、ミロの判断力は衰えていたのだろう。それは本当に小さな声ではあったが、カノンに届かないほどではなかった。頭の回転の早さでは、サガの他に追随を許さない男だ。
カノンは無言でミロを見つめた。それから、テーブルの上のりんごじゅーすを一瞥し、最近のミロの様子を思い返した。
酒は飲まない。
朝は食べない。
そのくせ、食欲はおうせいで、チョコチップクッキーばかり食う。
「…今更?」
自分の声が、自分の声ではないようだ。
ぼんやりと現実見に欠けたカノンの視界に、ミロの顔がひきつるのが映った。欲情に火照っていた顔から血の気が引いている。貧血でも起こすのではないか。急に庇護欲にかられたカノンは、ミロの元へ歩いて行って、抱き上げた。そのままの勢いで、しかし、慎重な足取りで、寝室の扉を開けて、ベッドにミロを下ろす。
「お前、熱は?」
「は?な、ない。」
「吐き気は?つわりとか大丈夫なのか?よくわからんが、妊娠初期に、こんな激しい運動して良いはずがないだろう。」
半裸のミロの上へ、カノンはうわごとように文句を垂らしながら、掛け布団をかけていく。ミロは厚く重ねられた掛け布団から這い出ると、不満そうに腕を組んで仁王立ちしているカノンを見やった。
「…怒らないのか?」
「見てわからんのか。むろん、腹を立てている。」
「すまん。」
「お前が最初から言っていてくれれば、呑気に酒など飲んだりせんし、激しい運動だって控えた。」
「?」
目を丸くしてもの言いたげなミロに、カノンが視線で先を促す。ミロは口をへの字に曲げた。
「勝手に妊娠して、それを黙っていた俺を軽蔑しないのか?」
「俺にとってお前はもっとも軽蔑から程遠い存在なのだが…そんなこともわからないのか?」
「むぅ。」
「良いから寝ていろ。」
「お前、どこに行くつもりだ?」
「トイレで抜いて来る。」
「待て、俺がこんな状態なのに放置していくのか?どうせなら」
吼えたてるミロの鼻先を摘まむと、にんまりとカノンは笑って見せる。
「俺に秘密にしていた罰だ。」
腹を立てたミロは、カノンにまくらを投げつける。カノンはそれをひらりとかわすと、わざとらしく笑い声を立てながら、寝室から出ていく。
向かう先は、教皇宮だ。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
フリーエリア
最新コメント
最新記事
(01/12)
(01/12)
(01/11)
(12/07)
(11/09)
プロフィール
HN:
たっぴ
性別:
非公開
ブログ内検索
P R