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続きです。
なお、最後はいつもどおりいちゃらぶさせる予定です。



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男はばらされたくなければ会いに来いと言った。いつ?日時は指定されていなかった。もし男がこの場へ来たときに自分がいなかったら。
想像するだけでぞっとした。
ミロ子はアンダーシャツで付着した体液を拭い、手の甲で口端をこすりあげると、勢いよく立ちあがった。
男に出会うまでの有頂天も、さっきまでの昂揚も、嘘のように立ち消え、気持ちがないでいた。ミロ子は部屋を抜けだし、あたりを見回した。岩壁の向こうに森、それから、十二宮が見える。ここは聖域の一番端にあるスニオンだろう。男が言っていたとおり、ここが拷問のための部屋だとすれば、このような僻地に設けられていた得心が行く。
はたして男が捕えられた敵か、反逆者か。ミロ子にはわからない。ミロに分かっているのは、自分の弱みを男が握っていること、口をつぐませるためにはまたここへ足を運ばねばならないこと、ただそれだけだ。
憤りと恐怖に震える両腕を抱え込む。これまで修行一辺倒で来たミロ子だったが、自分がされた行為がセックスだということは何となく理解できた。それが、これまで男に負けまいと躍起になって来たミロ子にとって、男女の力の差を歴然とさせる残酷な現実だということも。
半月の休暇は、いつ来るのかわからない男を待つために費やすことになりそうだ。それに、今シベリアへ行ったところで、カミュにどのような顔で会えば良いのかもわからない。もしかしたら、出会いがしらにみっともなく泣きだしてしまうかもしれない。
それだけは、避けたかった。親友だからこそ、許しがたかった。
ミロ子は屹然と顎を持ちあげると、スニオンを後にする。


男がやって来たのは三日後のことだった。まんじりともせず神経をとがらせて待っていたミロ子を男は嗤う。
「そんなに俺に会いたかったのか?」
その台詞にミロ子が噛みつこうとした途端、男が写真を投げてよこした。この前の行為の写真だ。
苦痛と恐怖に顔を歪めている自分の写真に、ミロ子はぞっとする。黄金聖闘士は誰よりも強くなければならない、強さの象徴でなければならない。この写真はその真理と真っ向から対立するものだった。
「殺してやる。」
息巻くミロ子を男が笑う。小宇宙の使えないこの部屋では、自分の方が圧倒的に有利だということを承知しているのだ。
「威勢が良いな。お前が俺の望むとおりにするならば、そうだな、ネガをくれてやっても良い。」
「…要求は何だ。」
「教皇を殺せ。」
そのとき、ミロ子の中で合点がいった。男の憎悪の対象は、教皇なのだ。ミロ子は教皇に新たな黄金聖闘士に任命されたことでとばっちりを受けたに違いない。
「ふざけるな、そんな要求飲めるか!」
衝動的にとんだミロ子の拳を男は払いのけると、勢いよくミロ子の身体を床に押しつけた。ぞわり。項の毛が逆立った。
「ならば、ネガはくれてやれないな。ばらまかないでやる代わりに楽しませてもらおうか。」
耳元で男が囁く。ねっとりと這わされる舌の感触にミロ子は怖気を耐えしのびながら、絶望に瞼をぎゅっと閉じた。


男の名はカノンと言った。
「教皇に聞いてみれば良い?俺の正体なぞすぐわかる。」
「そうして、オレの弱みを晒せというのか?ふざけるな。」
一方的になぶられながらも心の折れないミロ子をカノンは気にいったらしかった。とはいえ、諦めが勝るときもあれば、未来への絶望に泣き崩れそうになるときもあった。カノンへの憎悪で眠れない夜もあった。
たった半月の休暇で、何も知らなかったミロ子はずいぶん大人びてしまった。
シベリアからカミュが顔を店にやって来たのは、休暇の最終日だった。カミュはミロ子へ祝辞を述べると、眉根を寄せた。
「てっきりシベリアへ顔を見せにやってくると思っていたのだが…。」
暗に、何かあったのか、と問うてくる視線に、そのときばかりは有難みよりもわずらわしさを感じた。気休めにはなるかもしれないが、カミュに相談したところで問題解決には程遠い。脅迫されている我が身を呪いながら、ミロ子は微笑んだ。
「少し顔を見ない間に大人びたようだな。黄金聖闘士になったからか。」
何の気なしにカミュが言う。ミロ子は瞼を伏せて視線を逸らした。
早く大人になりたかった。強い、尊敬できる大人になりたかった。だが、現実はどうだ。
「カミュ。」
「何だ?」
「オレのことは良い。お前の話をしてくれ。新しく弟子を取ったのだろう?素質はありそうか?」
話題を逸らされたことにも気づかないで、カミュが語り始める。よほど、新しい弟子がかわいいのだろう。ミロ子は笑みを浮かべながら、カノンのことを考えていた。
どうやって、死を願うほどの苦痛を与えてやるか。あの胸に、アンタレスの火をともしてやるか。
次は、4日後。
それまでに腕を磨かねば。
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